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企業の幹部教育を目的に設立された、スイスのビジネススクール、IMDでは、1980年代後半からファミリービジネス研究やファミリー向けの教育プログラムを開設。以降、欧州をはじめ世界の経営者や承継者らに支持されてきた。

今年2月に日本で開催した講座は、毎年スイスで行われる5日間のプログラムを2日間に凝縮した内容(IMD、ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン、ロンバーオーディエ信託による共催・日経トップリーダー協力)。

会場に集まった20代から50代の24家族、32人の知見を広げたのは、ファミリービジネス研究の第一人者、デニス・ケニョン・ルヴィネ教授。デニス教授に授業のポイントや、永続的な発展を続けるファミリービジネスの共通点を聞いた。

日本での初講座はいかがでしたか。

デニス:2日間で確実に参加者の心のドアを開けたと思っています。私たちの役割は夢物語を語ることではありません。世の中が劇的に変化する中で綿密なフィールドリサーチを続け、参加者に実践的な内容を伝えています。

 今回のクラスには、2代目から12代目までの経営者や承継者、またその家族が集まりました。

 「ファミリービジネスとは何か」の概論からスタートし、老舗ブランドのケースを用いて成功と失敗の要因を分析。さらに日本の事例も交え、ファミリーやビジネスのガバナンス、事業承継、成長戦略について議論を深めました。

デニス・ケニョン・ルヴィネ
IMDグローバル・ファミリー・ビジネス・センター長。金融機関などに勤務後、欧州、アジア、中東、北米などの大規模なファミリービジネスを対象にガバナンスや資産承継、運用のコンサルティングや調査研究に携わる。自身もワイナリーを営むファミリービジネス出身。『ファミリービジネス 永続の戦略』(共著、邦訳はダイヤモンド社)ほか著書多数(写真=小野さやか、以下同)

理性と感情の二つの価値観を内包

ファミリービジネスの永続的な繁栄に必要なことは何でしょうか?

デニス:ファミリービジネスには経営者や株の所有者としてだけでなく、「ファミリー」の視点が加わります。ビジネスでは効率や成果を追求しますが、ファミリーという面では感情や愛情が大きく影響します。理性と感情という二つの価値観を内包しているのがファミリービジネスの特徴です。

ファミリービジネスには「ファミリー」「(株の)所有」「経営」という3つの要素が絡み合う

 ですから、人間関係が崩れたときにファミリービジネスは壊れやすい。半面、強い感情があるからこそ、経済が悪化しても乗り切る力があるといえます。

 大切なのは、立場の違いによる多様な視点を学ぶことです。そのため、グループワークやディスカッションを多く取り入れました。

欧州では定期的にファミリービジネスのプログラムに通うファミリーも多いと聞きました。

デニス:3代続けて事業承継の際にIMDで学んだファミリーもいます。世代ごとに取り巻く環境が全く異なりますから。

 また、何か特別な挑戦を始める際に訪れるファミリーもいます。特別な挑戦とは変革です。

 時代の変化に対応し、変革に挑むことをいとわないファミリービジネスは強いです。彼らは変革しようというタイミングで外部の人から多くの情報を仕入れます。本当に聞き上手です。