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「叱っても反応が薄い」「怒るとすぐ落ち込む」――。今まで通りの叱り方が社員に通じにくくなってきた。今どきの社員を育てるには、新しい叱り方を探る必要がある。そのヒントとなるのが、ラーメン店「日高屋」を展開するハイデイ日高の神田正会長の姿勢だ。いつも温和で笑顔を絶やさないことで知られる神田会長に、経営者としてなぜ怒らないでいられるのかを聞いた。

神田正(かんだ・ただし)氏
1941年埼玉県生まれ、78歳。73年に現在のさいたま市大宮区に中華料理「来来軒」を創業。78年に日高商事(現ハイデイ日高)を設立して社長に就任。99年にジャスダック、2005年に東証二部、06年に同一部上場。09年より会長を務める(写真=尾関裕士、以下同)

神田会長はいつも温和な表情をしている印象がありますが、部下がミスをしたら怒るときもあるのですか。

神田:実はほとんど怒ったことがないんですよ。人にガーッと言えない性格でもあるのですが、「会社が成長できたのは、従業員が懸命に働いてくれたから」という感謝の気持ちが強くて、怒る気になれません。売上高が400億円を超える会社になりましたが、元は1973年に埼玉・大宮駅近くに構えた一軒のラーメン店だったのですから。

創業当時の1970年代は、ヘマをした従業員を怒鳴りつけながらお玉でポカンと頭を叩く、そんな職人の指導風景があちこちで見られた時代だと思います。

神田:確かに従業員に対して高圧的に指導する店主は多かったですね。当時のラーメン店は個人経営が普通で、そこで働く従業員は「いつかは自分も店を持ちたい」と考えていて、独立志向が強かった。「どうせ辞めるんだし、早く技術を覚えて働いてもらうには厳しく怒っていいだろう」と考える店主が多かったのかもしれません。

ご自身は、同じように考えなかったのですか。

神田:当時は会社勤めの人の外食ニーズが高まり、チェーン展開の時代が来ると確信していました。店を拡大するには人が必要です。だから人を定着させるために、怒るよりも人間性を磨く従業員教育に力を入れたんです。技術は自然と身につきますが、人間性は強く意識しないと磨けません。

「朝は挨拶しよう」「両親を大事にしよう」。そんな人間として当たり前のことを大事にしようと言い続けたんです。従業員を喫茶店に連れて行って、距離を縮めることもやりました。励ましたり、家庭環境を聞いてどんな点に気をつけて人間として成長させていけばいいかと考えたりしていましたね。

「社長だから偉い」という意識はなく、目線を合わせた対等のコミュニケーションを心がけました。

ハイデイ日高は経営理念にも「感謝」を掲げる