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経営危機を招く社長は、総じて財務に無頓着だ。正しい決算書を作成し、それが発する警告に耳を傾けよう。中小企業の再生支援などを手がけるMODコンサルティング社長の金子剛史氏が売上拡大ばかり重視する社長の「ダメな決算書」を、現場での経験をふまえて指摘する。

金子剛史(かねこ・たけふみ)
MODコンサルティング社長。公認会計士と税理士の資格を持つ。慶應義塾大学卒業後、新日本石油を経て、エスネットワークスに入社。執行役員などを務めた後に現在の会社を設立。全国の金融機関などから依頼を受けて中小企業の再生支援などを手がける

金子さんのもとには、業績が悪化した中小企業の再生案件が多く持ち込まれるそうですね。財務の観点から見て、どんな傾向があると感じていますか。

金子:業績が悪くても賞与を払える会社でないと、今の時代、人が辞めていきます。そのためにはキャッシュを積んでおかなくてはならない。けれど、売り上げ重視の社長はその視点が抜け落ちていて、内部留保が薄く、キャッシュの状態ではほとんど残っていない。さらに借り入れの大半を固定資産に突っ込んでいる。こうなるとわずかな現預金も返済に充当することになり、業績が悪いときに賞与を支払う余裕なんてありません。

バブルの頃のように、借金で土地を買いあさる社長はさすがに減ったと思いますが。

金子:確かに固定資産といっても、最近の社長は製造業なら工場用地の取得、設備機械の購入など事業拡張のために使います。ただ、採算面はいいかげん。経営危機に陥った会社でも、少し業績が上向くとすぐに機械を増やそうとする。

 そんなときはこう忠告します。「社長、一本調子で市場が拡大する時代ではないです。生産量を増やす目的だけの投資はしないでください」。でも、社長は納得がいかない様子で「でも、この好景気のタイミングを逃しちゃいかんでしょう」と反論します。

 いや、待ってください。設備投資の回収に何年かかるか計算しましたか。仮に5年だとすると、どのような戦略で製品数量を5年間維持するのですか……。きちんとシミュレーションをした上での投資なら私も賛成しますが、再生現場で出会う社長は「何とかなるでしょう」と深く考えない。