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債権ベースで考えてしまう愚

勇気づけられる話です。

朝倉:視点は変わりますが、RIZAPグループの取締役構造改革担当を務める松本晃さん(編集部注:6月22日付けで退任し、特別顧問に就任)とお話をしていたときも、同じことを思いました。松本さんと「会社の活動をとてもシンプルに表現すると、お金をモノに換え、モノを債権(売り上げ)に換え、その債権をお金に換えることを繰り返すサイクルですよね」といった話をしていたんですよ。

 「この中で一番信用できるのがお金で、一番信用できないのが債権だ」と。だからキャッシュで物事を考えることもとても重要なのに、多くの経営者が「売り上げだ、利益だ」と債権ベースで考えてしまっている。

 でも実は、いつも頭の中で資金繰りを考えている中小企業の社長のほうが、大企業の社長よりもキャッシュを意識したファイナンス思考のセンスがよほどあるのではないかと思うのです。

 誤解がないように言っておくと、「すべての会社が未来にわたって成長し続けるべき」とは考えていません。例えば「この会社は自分の代で終える。生きている間は、社員が安心して幸せに働けるような場を頑張って維持する」という考えも立派だと思います。そうした場合は、粛々と利益を上げる経営に徹するほうがいい。

 ただし、「このままではじり貧になってしまう」と強い危機感を抱いている社長は、思い切って発想を切り替えてはいかがでしょう。

ヒントはありますか。

朝倉:一つは資本コストを冷静に考えること。上場企業でもスタートアップでも社長と財務状況について話していると、「黒字だから特に問題ないんだよね」とよく耳にします。これは資本コストを全く無視している証拠です。

 例えば利回り3%の社債を買いたくても、手元にお金がなければどこかからお金を借りることになりますよね。そのとき、「年利8%で貸します」と言われても、損をするから借りる人はいない。

 こんな当たり前のことは個人レベルなら分かるのに、経営においては非合理な判断をしてしまっている。「銀行から借りたお金を使って投資したら、利益率は金利よりも低かったけれど、黒字だからまあ問題ないか」と。

こんなことを自分に問いかけてみると、「PL脳」から転換するきっかけになる

 意識の変革には、次の世代に対する想像力を働かせることも役立ちます。いずれご子息が継ぐと分かっている場合に、「将来苦労させないために、今何ができるだろうか」と考える未来的な視点です。

 コニカミノルタで取締役会議長を務めている松崎正年氏も、先行投資のために赤字を出す判断を社長時代に下しました。「トップとしての経営は有終の美を飾る」といった短期的な視点ではなく、先を見通した英断だったと思います。

 新たな挑戦に投資しても、うまくいくかどうかは分かりません。しかし、「同じことをずっとやり続けているだけでは、未来は安泰ではない」ことは確実でしょう。