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老舗の倒産が新興企業の倒産を上回ってきた。環境変化についていけない老舗が増える状況をとらえ、中小企業の間で、老舗の買収という新潮流が生まれつつある。主な狙いは、長年培った信用力とブランドを短時間で手に入れるため。買収先の選定基準や、実際に買収を進める際の注意点を整理した。

 衰退する老舗が増える一方で、そこに目を付ける企業もある。事実、中小企業が老舗をM&A(合併・買収)するという新潮流が最近、生まれつつある。

 なぜ新しい流れが出ているのか。のれんに裏打ちされた信用を短時間で手に入れたいと考える買い手が増えている点が大きい。スピード重視の時代に、本業との相乗効果を出しながら、より強固なビジネスモデルを確立する。そして、ライバルの参入障壁を高めることを狙う。

老舗の買収は、中小企業が信用力をアップする新しい手段だ (写真:PIXTA)

 では、のれんに裏打ちされた信用とは何か。具体的には、顧客基盤、技術やノウハウ、取引先とのネットワーク、商圏、ロングセラー商品などが挙げられる。特に買い手の社歴が浅い場合には、売り手の「創業○年」という看板自体がシンプルな価値になる。

 「M&Aによる業容の広げ方としては、商圏や事業の幅を横に広げるといった水平展開パターンと、メーカーが卸・小売りを買収し、すべて自社で手掛けるといった垂直統合パターンなどがある。それは老舗を買う場合も同じ」と、フォーバルで、中小企業のM&Aサポート業務を手掛ける山田健一事業承継支援部長は話す。

 人材確保をM&Aの狙いにする企業もある。老舗の信用力を生み出す源泉は従業員。人手不足の折、技術や人脈などを持つ人材を一気に獲得できるのは魅力だ。

 一方、売り手にとっては、創業家の手を離れても事業を存続させられる利点がある。

 だが、別々に歩んできた企業同士が融合するのには難しさも伴う。失敗を防ぐには、買収先を選ぶ際のポイントを踏まえたい。