東京都町田市の“稼ぐ町の電器店”「でんかのヤマグチ」。山口社長は最近「顧客を減らせ」が口癖だ。顧客を増やすのではなく減らす――。単純に考えると顧客を減らせば売り上げは減る。なぜ「自殺行為」にも見える客数減を社員に指示するのか。その裏には上得意客に絞り込んで、丁寧に売る姿勢を貫くという基本戦略の徹底があった。

 「お客さんをもっと減らしなさい」。以前の記事でも触れた通り、2年ほど前からヤマグチでは、担当者1人当たりのお客さんの数を減らすように言い続けています。

 言い始めた当初は1人当たり約500世帯弱あったのを約400世帯弱まで減らすことを目標にしました。今はさらに目標を変えて約350世帯まで減らせと社員に話しています。

お得意さんに絞って手厚いサービスを展開

 もちろん、ただ単に顧客を減らすだけなら、売り上げは下がります。本当のお得意さんだけに絞り込んでサービスを徹底することで、売り上げが減ったとしても、きっちり儲けるというヤマグチの基本方針を改めて徹底してほしいというのが真意です。

「1人当たりの顧客数を350世帯まで減らさないと、お得意さんに十分なサービスができない」と語る山口社長
「1人当たりの顧客数を350世帯まで減らさないと、お得意さんに十分なサービスができない」と語る山口社長

 これまでもヤマグチは、累計購買額と直近に購入してくれた時期をお客さんごとに調べ、累計購買額が高く、かつ購買頻度が高いお客さんから順に訪問営業やダイレクトメールの送付をするという方針を貫いてきました。それでも、1人当たり500世帯弱だと、十分にお得意さんへの訪問ができないと考え、まず400世帯弱に減らすことを社員に求めました。

 ところが、それでもまだきめ細かい対応が不十分。そこで、350世帯を目指すことにしたのです。

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