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従業員の雇用と社名継続が条件に

 淀紙器が買い手に求めた条件は二つ。働き続けてくれた従業員の雇用と社名の継続だった。

 17年5月、淀紙器のAさんと面談した尾寅社長は、相手先のことを詳しく知ろうと、会社の歴史をAさんに尋ねた。Aさんは、創業者だった夫と自転車に製品を積んで近所の商店街に直接納品したエピソードを話した。それを聞いた尾寅社長はこう感じたという。

 「父から聞かされていた、うちの創業時の話とそっくりだ」

 だが、淀紙器の社員の同意が得られなければ、買収はうまくいかないと、尾寅社長は考えた。そこで、踏み込んだ提案をした。

 「御社の従業員一人一人と面談させてください」

 Aさんはこれを了承。後日面談すると、ほぼ全員が「会社が存続するのであれば、ぜひ働き続けたい」という回答だったため、売買の詰めのプロセスに進んだ。

「買収先の社長の最優先事項が、雇用と社名の維持だったため、売買金額の交渉はスムーズだった」と語る美販の尾寅社長(写真:大亀京助)

 デューデリは、美販の顧問である会計事務所が担った。M&Aで問題になりやすい簿外債務は一切なかった。

 買収額は地銀や会計事務所に支払う手数料なども含めて5000万円。実質4000万円分の負債も含めて引き継いだ。「5000万円相当の設備が3台あり、大阪市内の土地や建物も取得できたので、非常に有益だった」(尾寅社長)。

 17年6月の買収から約1年半がたち、相乗効果も出ている。美販の既存顧客のうち、単発でダンボール箱の注文を受けていた取引先に淀紙器のプラスチックケースを提案したところ、製品パッケージとして常時取引が決まった。

 現在、経理や配送は共通化している。「今後は営業も一本化したい」と尾寅社長は話している。

(この記事は、「日経トップリーダー」2019年3月号の記事を基に構成しました)

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