甘い情報収集で失敗も

 とはいえ、上場している大企業とは異なり、中小企業同士のM&Aは難しい。業績を含めた公開情報が少ない上、規模が小さい分、組織同士の相性などが大きな影響を及ぼすからだ。

 実際、事前の情報収集が甘かったため、「買収を検討していた相手企業の社員の猛反発に遭って破談になったり、M&Aの後、期待した相乗効果が得られなかったりするケースがよくある」(笹川社長)。

 限られた情報の中、M&Aをする際、何に注意すればいいのか。日経トップリーダー編集部ではそのポイントを次のように整理した。「売り手・買い手のトップの価値観を一致させる」「デューデリジェンス(資産査定)の盲点に目を向ける」「成功の鍵は『ほったらかす』に限る」「売買の目的が明らかであるか」「多少の『ケチがつく』は覚悟する」の5つだ。

日経トップリーダー編集部でまとめた「失敗しない中小M&A、5つの柱」。売り上げ、顧客数、技術の類似性など買収先を選ぶ基準はさまざまだ。大事なのはM&Aの成立ではなく、その後に相乗効果が得られるかを考えること。そのためにこの5つの柱が重要になる
日経トップリーダー編集部でまとめた「失敗しない中小M&A、5つの柱」。売り上げ、顧客数、技術の類似性など買収先を選ぶ基準はさまざまだ。大事なのはM&Aの成立ではなく、その後に相乗効果が得られるかを考えること。そのためにこの5つの柱が重要になる
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 5つのポイントのうち、今回は、売り手・買い手双方のトップの価値観を一致させて成功した例を紹介する。

 小さな会社のM&Aでは、トップの考え方が社風につながるため、より重要になる。相手との面談を通じて、会社の成り立ちや働き方などにずれがないかどうかを確認しておきたい。

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