36期連続で増収を続ける会計事務所、古田土会計の古田土満代表は、損益計算書(P/L)だけでなく貸借対照表(B/S)も生かして経営する大事さを繰り返し強調します。今回は、B/Sを読み解きながら「現預金は月商の何倍か」「売上高経常利益率は何%がよいか」といった、中小企業経営者が気にする経営指標の正しい見方を考えます。
前回に引き続き、中小企業の財務体質を強くし、盤石な会社にするための考え方を見ていきましょう。
さて、盤石な会社とはどんな会社を指すのでしょう。一言で言えば「現預金>借入金」であること。その差額が大きければ大きいほど、会社は安全と言えます。
では、現預金はいくら持っている必要があるのでしょうか。よく「現預金を月商の○カ月分は持たなければならない」という言い方をしますが、私は月商で考えるのはおかしいと考えています。貸借対照表(B/S)の項目である現預金を、損益計算書(P/L)の月商(売上高)を目安に考えるのは誤りだからです。

1952年生まれ。83年、東京・江戸川で古田土公認会計士税理士事務所(現古田土会計)を開業。「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。約2200社の中小企業を顧客に抱える。近著に『小さな会社の財務 コレだけ!』(写真:鈴木愛子)※古田土氏の「土」は正式には右側に「、」が入る
その理由を自動車の整備会社A社と販売会社B社の例で考えてみましょう。両社とも社員10人で、規模は全く同じと仮定します。
整備会社A社は、粗利益率が50%で、売上高が2億円。変動費は1億円で粗利は1億円になります。月商にすれば1600万円です。
一方、販売会社B社は粗利益率が10%で、売上高は10億円。変動費は9億円で粗利はA社と同じ1億円。月商は8300万円です。

このように、2つの会社は同じ規模、同じ社員数で、粗利も同じ1億円ですが、B社の月商はA社の約5倍です。では、B社はA社の5倍の現預金を持たなければならないのでしょうか?
ここで、両社に不足するお金はいくらかを考えてみましょう。かなり単純化すれば、これは売掛金と買掛金の差額です。A社は売掛金が2億円、買掛金が1億円で1億円の資金不足。B社は売掛金が10億円、買掛金が9億円で、やはり1億円の資金不足です。
このように、資金不足で借りなければいけないお金の額は、両社とも1億円。従って、借入金と現預金の関係は両社とも同じなのです。
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