過去にいくら儲けていたとしても、手元にお金が残っていなければ、こうした事態になりかねません。
現預金を増やし、借入金を減らしていくことが、いかに重要かが分かるでしょう。
このように、銀行が経営の指標として見る流動比率が高かったとしても、会社に資金がなければ経営はおかしくなってしまうのです。
このことを証明するために作ったのが「資金力格付表」です(下図)。

左側の「資金の運用内容」は会社が使ったお金です。「固定資金運用額」は、土地建物や棚卸資産など。「売上仕入資金運用額」は売掛金や受取手形など。「流動資金運用額」は未収入金などです。
右側の項目は、必要な資金をどのような方法で賄ったかです。「損益資金」は会社が儲けた利益の累計額。「固定資金調達額」は長期借入金などによる調達。「短期調達資金額」は短期借入金や割引手形による調達。「超短期調達資金額」は未払金などです。
資金調達方法から「危険企業」を判定
図に示した会社の現預金は7100万円ですが、そのお金はどのように調達したのか見てみます。
使ったお金は合計3億円。利益の累計である損益資金は1億4600万円ですから、不足額は1億5400万円です。資本金2000万円を入れても、1億3400万円足りません。
売上仕入資金のうち買掛金4200万円を入れれば不足額は9200万円に減りますが、まだ現預金はマイナス。買掛金を入れてもまだお金が足りないということで、借金をしないと、お金がない状態です。
このため、8300万円の長期借入金をしました。それでも900万円の資金不足を解消できず、結局、短期借入金8000万円で賄いました。
この会社の資金力を格付けすると「危険企業」です。現預金より短期借入金が多い状態で、銀行から今すぐお金を返してほしいと言われた途端、資金がショートしてしまいます。
一般的な財務指標を使って財務分析をしてみると、この会社は実は優良企業の判定になります。
銀行は自社ビルの建設や土地の購入を勧め、お金を貸そうとしますが、資金力を指標にすると危険な状態であることが分かります。
この会社は、絶対に土地や建物を購入してはいけないのです。
このように、経営者が損益計算書の利益額ばかり見ていても、資金力のある会社をつくることはできません。貸借対照表も合わせて考える「資金別貸借対照表」の視点を持つようにしましょう。
(この記事は、「日経トップリーダー」2018年11月号、12月号、2019年1月号の記事を基に構成しました)

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