損益計算書で利益が出ていても、あなたの会社にお金がたまっているとは限りません。36期連続で増収を続ける会計事務所、古田土会計の古田土満代表は、損益計算書だけでなく貸借対照表も生かして経営する大事さを繰り返し強調します。ここでは、損益計算書と貸借対照表を基に作成する「資金別貸借対照表」を使って、会社の資金力を見極める方法を解説します。

 儲かっている中小企業の中にも、実は手元にほとんどお金が残っていない会社があります。

 損益計算書で税引後利益が出ていたとしても、売掛金が増加したり、借入金の返済に充てていたりすれば、手元にお金は残りません。

<span class="fontBold">古田土 満(こだと・みつる)</span><br />  1952年生まれ。83年、東京・江戸川で古田土公認会計士税理士事務所(現古田土会計)を開業。「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。約2200社の中小企業を顧客に抱える。近著に『小さな会社の財務 コレだけ!』(写真:鈴木愛子)※古田土氏の「土」は正式には右側に「、」が入る
古田土 満(こだと・みつる)
1952年生まれ。83年、東京・江戸川で古田土公認会計士税理士事務所(現古田土会計)を開業。「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。約2200社の中小企業を顧客に抱える。近著に『小さな会社の財務 コレだけ!』(写真:鈴木愛子)※古田土氏の「土」は正式には右側に「、」が入る

 経営者はお金がどこから生まれ、儲かった利益はどこに消えたかを、きちんと理解していなければなりません。

 そのために必要なのがキャッシュフロー計算書です。ただ、キャッシュフロー計算書は、1期間のお金の流れだけを示すもので、累計の利益がどこに使われたかは分かりません。

「資金別貸借対照表」の考え方を知る

 累計の利益である、貸借対照表の純資産の部の利益剰余金がどのように使われたかを示すものが、「資金別貸借対照表」です。

 これは税理士の佐藤幸利氏が考案したもので、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)からつくるものです。

 資金を「損益資金」「固定資金」「売上仕入資金」「流動資金」の4つに分類し、お金の流れを分析します。

 損益資金とは、儲けた利益の累計です。ここを稼ぐのが会社の目的になります。

 固定資金は、土地建物や機械設備などが、長期的な資金で賄われ、バランスが取れているかどうかを示します。

 例えば、現預金が少ないと、ほぼ全額を長期借入金などで賄うことになります。

 損益計算書上では儲かっているからといって銀行の勧めで自社ビルを購入したり、設備投資をしたりすると、とても危険だということがここで分かります。

 売上仕入資金は、売上代金の回収額と、仕入代金の支払い額の差額を見るもので、いわゆる「サイトの勝ち負け」が分かります。

 例えば、売掛金が買掛金より先に現金化されればサイト勝ち、反対はサイト負けとなります。

 これら3つの資金の合計が「安定資金」です。

 これらの資金以外で発生した資金が流動資金で、資金全体のつじつまを合わせる役割を担っています。短期借入金と割引手形が中心です。

 安定資金がマイナスであれば、お金を短期借入金と割引手形で調達していることになり、とても危険な状態です。

 資金別貸借対照表からは、こういった危険な財務状態が明らかになるのです。

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