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労働時間を減らすばかりが働き方改革ではない――。エステーは2017年末から、若い女性社員が“オジさん社員”を街に連れ出して、今どきの消費者心理を体感する仕組み「トレンド・ラボ」を始めた。東京・表参道などに出かけ、「インスタ映え」とはどういうことかを女性社員から実地で教わったりしている。実は、この取り組みが社内の生産性向上に大いに結び付いている。それはなぜか。鈴木貴子社長が自ら語る。

 2017年末から、エステーでは「トレンド・ラボ」という活動を始めました。何をするか。入社1年目から7年目までの若手女性社員が“オジさん社員”を街に連れ出し、若い女性のトレンドを体感できるツアーを実施します。狙いはずばり、生産性向上です。

鈴木貴子(すずき・たかこ)
1962年東京生まれ。84年に上智大学外国語学部を卒業。日産自動車、LVJグループ(現・LVMH GROUP)などを経て2010年エステー入社。12年取締役兼執行役グローバルマーケティング部門特命担当。カリスマだった先代の後を継ぎ、13年社長就任(写真:小野さやか)

 エステーの主力商品は消臭芳香剤や防虫剤。購買層は女性が中心です。しかし、これまで商品開発は専ら男性社員が担っていました。男性目線で女性向けの商品を考えることには限界があると、当の男性社員も薄々感じていたのでしょう。そのギャップを埋めるためか、消費者調査などに時間もコストも多くかけていました。

 考えてみればもったいないことです。社内には女性の社員がいるのに。そんなムダをなくそうと始めたのが「トレンド・ラボ」です。

 第1回目のテーマは「インスタ映え」。女性社員の呼び掛けに、商品企画などに携わる4、5人の“オジさん”が手を挙げました。

 十数人で出かけた目的地は東京・表参道。まず人気のカフェで「インスタ映え」するサラダランチを食べ、スムージーを飲みます。そしてバラエティーショップで化粧品やネイルケア製品などを手に、女性社員から使い方の説明を受けました。

若い女性の心理を理解するため、“オジさん社員”は女性社員と一緒に東京・表参道のオシャレなカフェでサラダランチを体験した(写真:PIXTA、写真はイメージ)

 発起人の私も初回は参加しました。最初は緊張の面持ちだった男性社員たち。女性社員の丁寧な説明で次第にリラックスし笑顔を見せ始めます。

 何しろ女性向けの企画や開発が仕事です。女性に支持される商品が目の前にあり、ターゲット層の女性が傍らにいる絶好の環境に、意欲的な質問が次々に飛び出しました。会議室で議論するよりも伝わり方が早く、深い。有意義な時間になりました。