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ぬれ甘なつと(写真中央と右)はロングセラー商品だった

その後に打開策は講じたのですか。

石川:相変わらず百貨店依存の状態が続いていたので、とにかく販路開拓しかないと考え、トップセールスを続けました。

 コンビニエンスストアや総合スーパー(GMS)にギフト商品などとして扱ってもらおうと足を運んだり、テーマパークに売り込んで取引を始めたり……。ただ、東京駅の2店撤退による6億円の売り上げの落ち込みを補えなかった。

 立ちはだかったのは、日持ちと粗利率の低さの問題です。

 コンビニやGMSは、3、4カ月の賞味期限を求める。ところが、当社の商品は日持ちするものでもせいぜい1カ月でした。そこで、保存期間を延ばそうと、さまざまな脱酸素剤を試すなどして、何とか対応しました。

 しかし、いずれも駅売りに比べると利幅が薄く、資金繰り難を大きく改善するほど十分な利益を確保できませんでした。

税金などの滞納で破産に

破産後、管財人の選定で、銀座千疋屋グループが事業を一部引き継ぎ、石川さんは花園万頭の経営から離れます。破産する前に民事再生法を適用し、自ら支援先を募る選択肢はなかったのですか。

石川:税金や社会保険料の滞納という問題がありました。昨年初めから滞納が始まり、必死に打開策を探っていました。

 そんなとき、外資系洋菓子店の日本法人から提案があり、昨年9月から資本提携を含めた業務提携の交渉が始まった。12月には契約を結べる予定でした。実現すればまとまった資金が入るので、その見通しを説明し、税務当局に待ってもらいました。

 ところが、この提携交渉が土壇場でご破算になった。相手側の本社が「相乗効果が薄い」と。それで税金を支払う当てがなくなり、今年5月末までに納税しなければ、資産をすべて差し押さえると通告されてしまった。

 こうなると、民事再生法の適用を申請してスポンサーを探すことなど事実上不可能です。自己破産を選択せざるを得ませんでした。

 実は東京駅の2店がなくなった後に一度、民事再生法の適用申請を検討したことがありました。しかし、取引先や金融機関に迷惑がかかると考え、自力で借金を返済し、老舗の看板を守ることにこだわってしまった。それがかえって傷口を広げました。

 破産から半年がたちました。180年以上石川家で守り抜いた歴史を途絶えさせてしまった。今もショックを引きずっています。

(この記事は「日経トップリーダー」2018年12月号に掲載した記事を再編集したものです)

「誤算に学ぶ経営者の本音」第3期が5月から開講します

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