全4307文字

 ベティスミスは、セミオーダージーンズ作りに代表される「体験型消費」を、本社周辺で「面展開」した。敷地内には、工場や2つのジーンズミュージアム、その中に移転したオーダージーンズ売り場、アウトレットショップなどがある。これをトータルで見学してもらいながら、消費を促した。

 その結果、セミオーダージーンズは着実に評判が広がり、フルオーダーと合わせて売上高の10%弱を占める。利益面での効果も大きい。両者とも粗利益率は50%前後。通常の販路より10ポイント前後高い。受注生産でロスもない。

本社工場横に直販店

 売り方を次々に変えてきたベティスミスは今、5回目の変革を急ピッチで進めている。それが直販店の展開だ。高単価のこだわり品を求めるお客を取り込む。流行品を短期間で大量に売る業界常識に一石を投じる狙いがある。16年末に東京支店の一部を直販店に改装し、今年4月には、本社工場の横に約70㎡の店を構えた。

 直販店は、既存の取引先であるジーンズショップなどが反発する懸念がある。だが、「そもそも、バイヤー向けのショールームとしての機能を備えている。『デザイン性や遊び心が強すぎて量が出ない』という理由で、バイヤーが買わない商品がある。それがうちの直販店で売れれば、データで反論できる。その商品を仕入れて売ってもらえば、双方にとってプラスになる」と大島社長は語る。

2017年4月、本社工場横にオープンした直販店。 2週間で完売した2万4000円のジーンズなどが並ぶ

 売り方を変え続けられる秘訣について、大島社長はこう総括する。「トップ主導で何度でも売り方を変え、その都度、会社が強くなる経験をすると“変わり癖”が定着する。『あのときだって変われたじゃないか』と言い続けると、社員も新しいことにトライする」。

 ファストファッションの勢いは続くが、大島社長はオーダーサービスや直販店で、こだわりの強い顧客に、丁寧に商品を売ることなどで差異化を図る計画だ。ジーンズという商材を変えず、市場の中で柔軟に動き続けるベティスミス。その姿には見習うべき点が多い。

(この記事は「日経トップリーダー」2017年6月号に掲載した記事を再編集したものです)

「日経トップリーダー大学」第7期が4月から開講します

 ベティスミスの大島社長を含め、毎月1回、計12人の経営者が登壇し、自身の経験を通じて体得した経営の要諦を語る通年セミナー「日経トップリーダー大学」第7期が4月から始まります。

「より深く学び、より広く体験する」をテーマに掲げ、トップの講演・質疑応答はもちろん、受講生同士のディスカッションや年4回の現場視察(企業訪問)を用意しています。特に現場視察は、ベティスミスの本社敷地内見学のほか、函館エリアで無類の強さを誇るハンバーガー店チェーン「ラッキーピエロ」創業者の王一郎会長の講演や店舗視察など、盛りだくさんの内容です。

 経営力を高め、景気の波などの外部環境に左右されない強い企業をつくりたいと真剣に考える中小企業経営者のための年間プログラムです。2月13日(水)には、ベティスミスの大島社長が事前説明会で講演します。この事前説明会や本講座の詳細をご覧の上、ぜひ参加をご検討ください。

s