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 きっかけは1本の電話だった。「昔みたいにジーンズをはきたいけれど、太ってしまって既製品は合わない。特注品を作ってもらえないか」。2000年、50代の男性からこんな依頼を受けた。

 「何かの参考になるかもしない」と見た大島社長。試しに特注品を作ってみると、何件か同じ話が来るようになる。そこで03年、本社工場裏に「オーダージーンズ」と称し、フルオーダーの店を設けた。すると、月数本の注文が入った。

ジーンズのフルオーダー

 新しい売り方による小さな成功。これを広げるため、大島社長が採ったのが、販売形態が似た業種と連携するという手段だった。

 ヒントは、イタリアの有名テーラーの営業部長との面会でつかんだ。06年、オーダージーンズが地元の「倉敷ブランド」に認定されたこともあり、そうした反響が人づてに伝わって、面会が実現した。

 商談は不成立に終わったが、大島社長はそこで大きな学びを得る。採寸し、生地やボタンなどを選ぶ過程が、スーツの仕立てとオーダージーンズは同じと気づいた。そこで、仕立て紳士服店への売り込みを始める。

 紳士服店からすると、生地やボタンのサンプルなどの販売キットをベティスミスから購入すれば、普段と同じ流れで仕事ができる。しかも、受注販売でロスがないため、国内外で提携先が100店に増えた。価格は3万1000円だが、生産が追いつかず、今は提携先を60店、月150本の注文に絞っている。

本社敷地内は工場のほか、「ジーンズミュージアム」など多様な施設がある

 10年にはオーダージーンズで蓄積したデータを生かし、セミオーダージーンズに進出した。

 大島社長は、これに異業種の販売手法を転用するという工夫を加えた。具体的には「セルフうどんのサービスをまねした」という。

 セルフうどんは、麺やつゆ、具材をお客が自由に選べる。それと同様に、セミオーダージーンズの提供方法を次のようにした。

 お客は基本パターンに沿って、ジーンズの種類を決める。次に約25種類あるボタンやリベット(ポケットの角に付ける金具)を自由に選び、お客自身がプレス機を動かして取り付ける。自分好みの商品を作る楽しさを体験できる過程は、セルフうどんと同じ。最後に、裾上げなどは職人が手掛け、1時間程度で仕上げて本人に手渡す。価格は7000円が基本だ。