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 また、被害の大きかった宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区で、小中学生約1000人を迎え追加公演を行いました。被災者の心情に鑑み、マスコミはシャットアウト。両親を亡くしたある子供が観劇後に伝えてくれました。「養父を亡くすアンの姿に自分を重ね、ようやく親の死を受け入れられた」と。「被災してから夜の暗さが怖かったけど、今日は楽しい気持ちで眠れそう」と話してくれた子供もいました。

 観る人を元気にしたいと願う社員の思いが伝わったと感じています。売り上げ重視の興行イベントでは難しいでしょう。地域の皆様との時間を大切にしてきたからこそ、心が通い合うのです。

CSRの専門部署はない

 エステーにはもう1つ、時間をかけて取り組む事業があります。せっかちな私にしては珍しく「5年や10年で結果が出ると思わないでね」と社員に伝えています。

 北海道に自生するトドマツの間伐材から空気浄化作用のある樹木液を抽出。原料として商品化する「クリアフォレスト事業」です。

 研究開始は08年。トドマツの樹木抽出液には排ガスに含まれる二酸化窒素を低減する効果などがあると発見し、11年に事業化を決定。13年に自動車内に備え付ける空気浄化剤を発売しました。

 まだ事業として成功しているとは言えません。けれども、環境問題を解決するため、長い目で見て試行錯誤を続けていきます。

 エステーの社内では、社会貢献事業に対し「CSR(企業の社会的責任)」という言葉を使いません。なぜなら、社名のエステーは、SERVICE(サービス/奉仕)のSとTRUST(トラスト/信頼)のTからなる言葉。社会に奉仕し信頼を得ることは、エステーにとって企業活動に付随する責任どころか、本業そのもの。

 企業の社会的責任は特別なことではない。経営者と社員の心に根付いた活動こそ、長く世の中に求められる存在へと企業価値を高めていくはずです。

(構成:福島哉香、この記事は、「日経トップリーダー」2018年3月号に掲載した記事を再編集したものです)

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