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自社の思いを伝える

 公演にかかる費用は億単位。会長がミュージカル好きだったものですから当初、社内で「道楽が過ぎる」という批判の声が上がったといいます。それをなぜ、ここまで続けてきたのか。そして、私も続けていこうとするのか。
 それは、会社に利益を超えた存在意義を与えるため。事業を長く続けるには利益が不可欠ですが、それだけでは“法人”としてのエステーが社会から認められる存在になったとは言えません。

 組織としての“思い”から発する活動で社会貢献し、社会から必要とされることで、社員も取引先の皆さんもエステーの仕事に誇りを感じられるのではないか。

 「赤毛のアン」は戦後、会長自身が翻訳書を幾度も読み、勇気付けられた1冊です。主人公の試練と成長、周囲の温かな人間関係を通して「いろいろあるけれど、明るく生きていこう」というメッセージを発している。そんな力強い物語を日本中に届けたい。

 熱い思いで続けていると、親子2代にわたり楽しみに来てくださるご家族の方々がいます。中には社員に「皆様で食べてください」と差し入れをくださる方も。

エステーが開催を長年続けているミュージカル「赤毛のアン」

 社員にとって年に一度のミュージカルは、お客様と直接触れ合う貴重な機会です。感謝を込めて精いっぱいのおもてなしをする。来場者にとっては、会場にエステー社員が立っているのと、無関係のアルバイトスタッフが立っているのとでは全く違います。「エステーさん、ありがとう」というお客様の声が、社員のモチベーションを高めています。

 2011年にこんなエピソードがありました。3月に東日本大震災が発生し、開催地である仙台市のオーディション会場が使えなくなってしまったのです。しかしどうしても8月の本公演は実施したい。そこで6月、別のホールを探して、大急ぎで選考を実施したのです。

 会場には地元の子供たち約100人が駆けつけました。中には家を流された子もいました。「生きるのが精いっぱいだった」と語る子供たちが、オーディションで気丈に振る舞い笑顔を見せる。その姿に、カメラマンは思わず全員を撮影。社員たちは本番開演前に全員の笑顔をスクリーンに映し出しました。