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エステーは、ミュージカル公演を20年以上続ける。オーディションからチケットのもぎりまで社員が運営にがっちり関わり、企業名を宣伝するだけの“冠協賛”とは一線を画する。当初は「社長の道楽」と揶揄されたが、約1万7000人の招待枠に15万人が応募する人気イベントに育った。イベントを続けてきた背景には、企業としての「思い」が存在価値につながるという信念がある。
鈴木貴子(すずき・たかこ)
1962年東京生まれ。84年に上智大学外国語学部を卒業。日産自動車、LVJグループ(現・LVMH GROUP)などを経て2010年エステー入社。12年取締役兼執行役グローバルマーケティング部門特命担当。カリスマだった先代の後を継ぎ、13年社長就任(写真=小野さやか)

 エステーでは毎年8月、ミュージカル「赤毛のアン」を全国8都市で上演します。といっても、いわゆる“冠協賛”ではありません。単純にスポンサーとなり企業名をアピールするものとは違うのです。

 オーディションから本番までの約半年、開催する全国8都市の市民の皆さんと社員がつくり上げる地域密着の一大イベントです。

 3月に、広報・宣伝部員が地元小学生らを対象にキャスト10人強を選ぶオーディションを実施。本番に出演するのは、全国で約100人。審査だけで大仕事です。

 4月には、支店の営業部員が取引先の小売店の方々と告知を開始。実はこのミュージカルは全席無料の招待制。店頭などにチラシやハガキを設置し、チケットプレゼントキャンペーンを展開します。

 7月には社長参加の下、本社で初の台本読み合わせです。そして8月の公演では、全国の社員が劇場スタッフとして周辺案内や客席への誘導、チケットのもぎりなど会場運営の一切を担います。

 おじの鈴木喬会長が社長時代に始めたこの活動は、2019年に22年目を迎えます。18年は約1万7000人の招待枠に15万395通の応募がありました。