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社員に笑顔が少なかった

 小巻館長がピューロランドに着任した当時は、入場者数が落ち込み、スタッフに笑顔が少なかった。小巻館長の顔を知らないスタッフに、お客のふりをして「何時からパレードですか」と聞いても答えられない。接客に当たるのは大学生などのアルバイトが多く、接客のスキルがあまり身に付いていないケースが目立ったという。

 「こちらに着任したばかりのときは、文字通り社員が頭を抱えていた。あの光景は今も忘れない。私はできるところから頑張るしかないと思った」

小巻館長は東京大学大学院で心理学を学んだ。そのエッセンスを朝礼に取り入れている

 そこで小巻館長は、最初に約200人のスタッフと対話をすることから始めた。「なぜこれまで辞めないでいたのか」「ピューロランドの仕事をしていて楽しかったことは何か」「大変だったことは何か」「ピューロランドをアピールするとしたら、どこをアピールしたいか」を1対1で聞いた。

 すると、どのスタッフにも「ピューロランドを良くしたい」という思いはある。何をしたらいいかのアイデアも持っている。ただ、そうしたことを言葉にして伝え合う場がなく、日々の仕事に追われている状態だと分かった。業績が厳しいために、お金のかかることは何であれ、言い出しにくい雰囲気もあったようだ。

 スタッフとの対話を終えて、小巻館長が決断したのが、1日12回の「ウォーミングアップ朝礼」の導入だった。ピューロランド赴任からわずか3カ月後の14年9月から開始した。

 「スタッフと短時間でもいいから毎日接点を持つことが、今のピューロランドに一番必要で、ファンを取り戻すために有効な手段」(小巻館長)と考えた。だから1日に12回の朝礼が必須だった。シフトが違うことを理由にそもそも「朝礼をやらない」とか、「一度にまとめてやればいい」という発想は初めからなかった。

 1カ月に1回、1年に1回の研修では、どんなに素晴らしい内容でも人は変わらない。伝えたいことはたくさんある。ピューロランドの理念、お客様を笑顔にすること、そのために自分たちがまず笑顔でいること、さまざまな部署があってピューロランドができていること……。こうしたことを体感するには繰り返し毎日話すことが重要。そんな思いもあった。

 開場の1時間前から午前11時まで約2時間。正味10分ほどの朝礼が、15分おきに連続で実施される。回数は日によって多少変わるが、概ね1日に12回前後だ。

 曜日や時間帯によって集まるスタッフは変わる。1回に集まる人数は20人以上のときもあれば、5人程度のこともある。とにかく「その日のシフトに入ったスタッフ全員が参加する」ことを大切にしている。