成功者の転落劇から、ビジネスと人生の失敗学を探求する本連載。今回は、電気自動車テスラの名前の由来にもなった、天才科学者ニコラ・テスラの後編。前回、自ら開発した「交流システム」を携えて米国に渡り、発明王エジソンを「電流戦争」で負かしたテスラ。一躍スターとなるも、その先に落とし穴が待ち受けていた……。「天才科学者」が「起業家」として失敗した原因を分析する。
一八九三年、「電流戦争」を制したニコラ・テスラは時代の寵児(ちょうじ)となった。なにしろ、発明王エジソンに勝利したのだ。社交界の花形となり、巨額の特許料を手にすることもできた。科学者・発明家としての大きな名声と今後の研究資金も手にしたテスラ。休む間もなく新たな分野への挑戦を始めた。
そこに、強力な援軍が現れた。大投資家J・P・モルガンだ。
巨額の投資を得て暴走
電流戦争でテスラを資金援助したのは、ジョージ・ウェスティングハウス。その勝利は、ウェスティングハウスにも利益をもたらした。
一方、モルガンが目をつけたのは、テスラが当時、最も力を入れていた「無線通信技術」だった。無線通信は、情報通信の世界に革命的変化をもたらす。その開発に成功して特許を取得できれば、全世界から莫大な利益が転がり込んでくると考えたモルガンは、テスラの天才に投資したのだった。
しかし、ここでテスラは、勢い余ってコースを外れてしまう。

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