上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談は、同業他社に転職した30歳の女性から。前職の収入を基準に交渉したところ、今の勤め先では1つ上のグレードの給与に相当し、上司から「嫌み」を言われるようになったとこぼします。上田さんは「給与に見合うアウトプットを出して見返そう」と背中を押します。

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>>悩みの投稿<<

悩み:転職したら「君の給与は高い」と上司に嫌みを言われるようになりました。給与に見合う働きができていないという意味でしょうか?

 最近、同じ職種の未経験分野で採用され、同業他社へ転職しました。その際に前職から所得が大きくダウンしないように交渉したのですが、その結果、私が採用されたグレードを超えた給与をもらっているようです。1つ上のグレードの新任者給与とほぼ同じらしく、上司から「君の給与は高い、高い」と折に触れて言われます。たとえそうであっても大差はないし、どういう意味で言われているか不明で、何と返答していいかも分かりません。給与に見合うような働きが足りないという意味でしょうか。

 私は残業時間も短い方で、固定残業代の6割程度は働かずにもらう形になっています。前職では残業時間が長いと個人、所属部門、上長のそれぞれの査定評価が下がる連帯責任制で、残業時間抑制意識が強かった影響があるのでしょう。現職の残業時間の長さを評価する人が多い傾向に正直、若干引いています。これも上司の言葉に関係するのでしょうか。

 試用期間中はアウトプットで貢献するよりむしろ、インプットに重心を置き、会社に慣れて少しずつ社内ネットワークを築き、全体理解を深めるフェーズと思って日々臨んでいました。この考え自体が中途採用者として甘いということでしょうか。今後どういうスタンスで業務に当たるべきでしょうか。

(30歳、女性、会社員)

上田準二:時代が違うから参考にならないかもしれないけれど、僕も入社1年目に上司から全く同じことを言われましたよ。

小笠原啓(日経ビジネス編集):君の給与は高い、と。

上田:そう。冷静な口調だけど、やけにはっきり言われたね。新人だから仕事に慣れなくて、どうしても業務時間内に仕事が終わらない。仕方なくそれを日曜日に出勤して片付けていたんだけど、休日出勤の残業代というのは割高になる。それを半年ぐらい続けたら、上司も目に余ったんだろうね。君の給与は高い、に続けて何と言ったと思う?

小笠原:この給料泥棒め! これからはタダ働きだ!

上田:さすがにそれは労働基準監督署が黙っていない(笑)。僕も含めて同じような状況の若手を集めて「君たちは、高賃金の非能率労働者だ」と言ったんだ。

 改めて人事評価面談の場で聞いたところ、会社としてはそれなりの賃金を払っているんだから、もっとスキルアップして仕事の能率を高めてほしいという意味だった。君らの処理能力はもっと高い。今の業務量でこんなに時間を使うのは、人材の無駄遣いのように思える。期待しているからもっと高い水準を目指してほしい、というメッセージだった。

 相談者さんの場合はどうだろう。

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