上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談は年老いた父親に運転免許の返納を促すかどうかに頭を悩ます48歳の女性から。74歳の父親にとって必需品であることは理解しつつも、運転し続けることに不安があると明かします。上田さんは「何かあってからでは遅い。娘の立場から心配していることを伝えよう」と助言します。

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悩み:74歳になった父親に免許返納を促すかどうかで悩んでいます。娘から伝えたら「年寄り扱いするな」と反発されないでしょうか?

 離れて暮らしている74歳の父親に、運転免許の返納を促すかどうかで悩んでいます。先日、約1年ぶりに帰省したところ、判断力の鈍さが気になりました。本人は自覚していないようですが、もしかしたら認知症の始まりなのかもしれません。

 問題は、自動車が父にとって欠かせない移動手段になっていることです。足腰が弱ってきた母を病院に連れて行くだけでなく、日常の買い物や気晴らしの遠出にも使っています。もし免許返納により運転できなくなれば生活パターンが一変するため、そこに対応できるかどうかも不安です。

 テレビなどで高齢ドライバーによる事故のニュースを見るたびに「明日こそは電話しよう」と思うのですが、なかなか実行できません。ご意見を伺えればと思います。

(48歳、女性、会社員)

上田準二:私もつい最近76歳になったから、相談者さんのお気持ち、よく分かりますよ。高齢ドライバーの1人として、判断やアクションの遅れを自覚せざるを得ない。判断ミスや思い違いも増えてきて、「はっ」とする瞬間が多くなる。テレビなどで高齢ドライバーの重大事故が繰り返し報道されているけれど、他人事とは思えないよね。僕も含めて「自分は大丈夫」だと思っているからこそ運転を続けているんだけれど、真剣に考え直さないといけないかな。

 僕が運転するときは、ほとんどのケースで家内が助手席に座っている。家内も運転できるから疲れたときには交代してもらえるし、周囲の状況にも注意してくれる。万が一、高速道路などを逆走しそうになっても、きっと止めてくれると思うしね。家内が「危ないからあなたの運転する車には乗りたくない」と言ったときが、僕にとっての免許返納のタイミングなんだろうね。

小笠原啓(日経ビジネス編集):投稿から推測すると、相談者さんのお父さんは1人で運転することが多そうです。

上田:そのようだね。リスクと隣り合わせの状態で運転していると考えた方がいいかもしれない。だからなおさら、相談者さんも心配なのでしょう。もし万が一、お父さんが事故を起こしたら自身が危険な目に遭うだけでなく、加害者になってしまうかもしれない。覆水盆に返らずというけれど、何かあったら取り返しがつかない。そう考えると、免許返納は時間の問題だと考えた方がいいだろうね。

小笠原:75歳以上のドライバーは、免許更新時に認知機能検査を受けなくてはなりません。

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