上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談は26歳のIT(情報技術)エンジニアから。新型コロナウイルス禍を機に始まった在宅勤務を謳歌していたところ、社長の一存で出社が求められるようになり戸惑っているとのこと。上田さんは「リモート会議では深い議論は難しい。意思疎通できていると誤解していないか」と問いかけます。
※読者の皆さまから、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
悩み:在宅勤務の快適さに慣れていたところで、社長の方針転換により出社が求められるようになりました。リモート会議でも十分に意思疎通できているのに、わざわざ通勤する必要があるのでしょうか?
IT企業でエンジニアをしています。働き方についての相談です。新型コロナウイルス禍が深刻化した2020年から在宅勤務に移行しました。通勤地獄から解放され、自由な服装で自分のペースで仕事ができるためうれしく思っていたのですが、この秋から出社が求められるようになりました。きっかけは社長の方針転換。コミュニケーション不足で斬新なアイデアが現場から生まれなくなっているように感じているようです。個人的には通勤時間がない分生産性が高まり、リモート会議でも十分に意思疎通できていると考えています。せっかく手に入れた自由を奪われるようで、なんだか納得いきません。どう考えればいいでしょうか?
(26歳、男性、会社員)
上田準二:新型コロナ禍で在宅勤務が一気に普及したけれど、その反動が起きているということかな。テレワークが必ずしも生産性を高めるわけじゃない。顔色をうかがうような機微を含むことは、リモート会議の画面越しでは相談しづらいでしょう。チームを率いている管理職や経営陣は特に、そんな悩みを抱えているんじゃないかな。
コロナ禍までの歴史を振り返ってみると、出社してフェース・トゥー・フェースの会議を通じて課題や目標を共有するのが日本企業における一般的な働き方だった。感染リスクが収束するにつれて元に戻っていくのは、ある意味で当然のことなんだよね。
小笠原啓(日経ビジネス編集):22歳のときに新卒で就職したと仮定すると、相談者さんは社会人5年目ぐらい。そのうち約3年間を在宅勤務のスタイルで仕事をしていたら、むしろ出社する方がイレギュラーなのかもしれません。
上田:そうなのでしょう。自由が奪われるようで納得できない、という感情も分からなくはないかな。だけど、気持ちを切り替えてみませんか。相談者さんが勤めている会社では、テレワークのメリットとデメリットをてんびんに掛けて、リアルに出社してもらう方が効果的だと判断したのでしょう。
小笠原:米国のテック企業では出社を求める経営者が増えているようです。米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は従業員に対して、「毎週、最低40時間オフィスで働くのが嫌だという者は、他の就職先を探すべきだ」というメールを送ったと報じられました。米アップルも9月から週3日の出勤を求めています(参考記事:[FT]アップルが出社義務付け 社員は激しく抵抗)。
上田:欧米に限らず日本企業の多くの経営者も、会社を円滑に運営するには出社勤務が欠かせないと考えていると思うよ。相談者さんが今いる会社で働き続けるなら、社長の意向を無視できないよね。
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