上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談は管理職に昇進したばかりの43歳男性から。組織運営を学ぶためビジネス書を読み始めた一方で、小説のようには心躍らないといいます。上田さんは「頭の中にインプットしておけば、どこかのタイミングで役に立つ」とアドバイスします。

※読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。

>>悩みの投稿<<

悩み:管理職になったばかりで組織運営に悩んでいます。お薦めのビジネス書を教えてください。

 4月から管理職になり、組織運営の難しさに日々直面しています。少しでも勉強したいと考えてドラッカーのマネジメント関連の書籍を読みあさり、自己啓発本もいくつか試してみたのですが、小説のようには引き込まれませんでした。何かお薦めの本はあるでしょうか?

(43歳、男性、会社員)

上田準二:僕も現役時代は何冊もビジネス書を読んだけど、相談者さんと同じでぐいぐい引き込まれた記憶はないよね。ストーリーが練られた小説のように、ページをめくる手が止まらず一気に読み切るなんてことはない。書いてあることをちゃんと理解するのがビジネス書を読む目的だから、1ページずつじっくり時間をかけて読んでいくしかない。

 そんな中で特別なのが、日経ビジネスから出ている書籍かな。9月に始まった「日経ビジネスBOOKS」では、この連載を基にした『とっても大きな会社のトップを務めた「相談役」の相談室』など約10冊が読み放題。この機会にぜひ読んでほしいよね。

小笠原啓(日経ビジネス編集):かなり強引な宣伝、ありがとうございます(笑)。本題に戻りますが、上田さんがお薦めするのはどんな本でしょう?

上田: なんといっても面白かったのは、ウォルター・アイザックソン著の『スティーブ・ジョブズⅠ、Ⅱ』かな。

小笠原:(講談社から出たベストセラーじゃないか……)

上田:米アップルを創業した経緯から巨大な企業へと育て上げた手法、プライベートの問題まで、一流のジャーナリストが徹底的な取材を通じて浮き彫りにした伝記だね。「ジョブズ公認の決定版評伝」というだけあって、彼の考え方や感性が手に取るように分かる。偉大な経営者の仕事の流儀を学べるビジネス書でありつつ、読み手の心をつかんで離さない名著だよね。

 ただしこれは例外中の例外。血湧き肉躍るような読書体験をビジネス書に求めるのが、そもそもの間違いのような気がするね。

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