上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談はメーカーの地方支社で働き、結婚を控えている29歳の女性から。後輩が先に東京赴任となり、モヤモヤとした思いが湧き起こってきているようです。上田さんは「先に東京本社へ行ったから優秀だとは限らない。別居婚にならなかったことを幸運だと考えよう」と助言します。

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>>悩みの投稿<<

悩み:同じ部署の後輩が私より先に東京本社赴任になりました。今の勤務地で結婚を考えているので好都合なのですが、モヤモヤとした思いが拭えません。どうやって気持ちを切り替えればいいでしょうか?

 入社以来メーカーの地方支社で営業の仕事をしている、29歳の女性です。ここ半年で仕事の範囲が増えたこともあり、新しい仕事への意欲ややりがいも感じております。一方で、30歳を目前に結婚や出産のリミットについて悩みを感じることが増えてきました。お付き合いしている方と結婚の話も出ており、来年には入籍も考えております。

 そのような中、最近人事異動の発表があり、同じ部署の後輩の女性が東京本社勤務に抜てきされました。その件で自分の気持ちに整理がつかずモヤモヤとしています。

 東京本社での勤務については入社当初から漠然と行けるものだろうと考えており、周囲からも「次はあなたが行くのでしょう」などと声を掛けられることもあり、ある程度覚悟はしていました。ただし、「実際に行くとしたら結婚はどうなるのだろう、私に務まるのか……」というのが本音のところでした。

 もし転勤になった場合、今お付き合いしている方とは別居婚になります。今回の抜てきでその心配は全くの杞憂(きゆう)に終わったことが分かり、少なからずショックを受けています。会社としてもそのポジションに最もふさわしい人を選ぶでしょうし、若くて優秀な後輩を選ぶのは最適だと思います。半面、自分も行きたかった気持ちがあるので、気持ちを切り替えて仕事をするのが難しいです。自分のスキルが足りなかったのかもしれないと考えてしまい、みじめな気持ちにもなっています。

 ぜひとも東京本社勤務になりたいと思っていたわけではありません。最近では男尊女卑など古い社風に嫌気が差し転職を考えていました。そのため、上司に直談判するのも気が引けます。自分にはこの会社にいる価値がないのではないか、もう出世はできないのではとネガティブな気持ちが拭いきれません。後輩に対してもぎこちない態度しかとれず苦しんでいます。どうすれば悩まずにすむのでしょうか。

(29歳、女性、会社員)

小笠原啓(日経ビジネス編集):相談者さんからすれば「逃した魚は大きい」という気持ちなのかもしれませんね。もっと強く希望しておけば東京本社勤務に選ばれたかもしれないという後悔が、モヤモヤの原因のような気がします。

上田準二:そうなんだろうね。もう少したてば「なぜあれほど悩んでいたんだろう」と思うはずだけれど、人事の発令直後に落ち着かない気持ちもよく分かる。僕も同じような経験をしたからね。

 僕は新卒で伊藤忠商事に入り、まずは東京本社で働くことになった。ところが1年後、大阪の営業支部への異動辞令を受け取った。転勤して部が変わるのは同期入社で1人だけだったからショックだったね。辞めようかと本気で悩んだぐらい。だけど、1年目で辞めて他の会社に行っても同じことの繰り返し。ならば思い切ってやってやろうと思ったわけ。

 幸運なことに結果が出て、大阪の上司からも評価されるようになった。相談者さんと同じ年齢の頃には「次に海外に行くのは上田君かな」とよく言われるようになった。

小笠原:チャンスが巡ってきましたね。

上田:20代後半ともなると同期入社の何人かは既に海外駐在していたし、3~4年目の後輩でも優秀な人が選ばれて渡航していた。ところが僕は海外駐在に必要な適格試験を受けていなかったんだよね。

小笠原:なぜですか。もったいない。

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