上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、部下との接し方に悩む45歳の男性から。新型コロナウイルス禍前は呼び捨てが一般的だった会社でも、リモート会議で呼び捨てにするのははばかられるのだとか。上田さんは「会社は年齢の上下や男女を問わず、誰がいつどのような立場になるか分からない世界。全員を『さん』付けで呼んでおいた方が気楽だ」とアドバイスします。
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悩み:呼び捨てが一般的だった部下を、「さん」付けして呼ぶかどうかで迷っています。これまで一般的だった言葉遣いを変えると、こびたような印象にならないでしょうか?
部下に「さん」付けをするかどうかで悩んでいます。勤めている会社では年下の社員に対しては男女問わず呼び捨てにするのが普通でした。一方で顔が見えないリモート会議だと、威圧的な感じを受けるという声が若手の中であるようです。かといって、これまでなじんでいた言葉遣いをいきなり変えると相手にこびたような印象になりそうです。何かいいアイデアはあるでしょうか?
(45歳、男性、会社員)
上田準二:以前、中年の危機についての相談に答えたけど(『管理職になっても物足りない、これって「中年の危機」ですか?』)、部下が増えていくにつれて今回のような悩みが頭をよぎるようになるんだよね。僕もかつてはそうだった。
小笠原啓(日経ビジネス編集):今でこそ温厚な上田さんも、現役バリバリの商社マン時代は営業成績の悪い部下を「おい、てめえ」と怒鳴りつけていたとか。
上田:根も葉もない噂を流すんじゃないよ。信じる人がいたらどうするんだ(笑)。
若い頃は単純だよね。目上の人は「さん」付けで、同期入社は「君」か呼び捨て、部下や年下に対しては呼び捨てが多かったかな。呼び捨てにするのは関係が近い人だけで、威圧的というより親近感を込めて声をかけていた気がする。
では、会社で役職が上がっていくにつれてどうなったか。これまで呼び捨てにしていた同僚や部下も、ほとんどを「さん」付けで呼ぶようになったんですよ。あるときからは役職も男女も年齢も関係なく、一貫してそう呼ぶようにしてきた。ファミリーマートの社長時代は、廊下で新入社員とすれ違ったときでも「さん」付けで話しかけていたな。
今では、多くの企業が「さん」付けで呼ぶようになっているんじゃないかな。年功序列ではなく能力主義で処遇されるようになると、昨日まで呼び捨てにしていた部下が上司になるというケースが発生する。外部からスカウトされた経営幹部などは、年齢も経歴も最初のうちは分からない。そうなると、目上に対してため口をきくわけにはいかないでしょう。ならば、最初から「さん」付けで呼んだ方が合理的なんだよね。
小笠原:私が上田さんの部下だったと仮定しましょう。これまで呼び捨てだったのにいきなり「さん」付けで呼ばれると、距離を感じてしまうような気がします。
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