小笠原:上田さんも何度か出向や転籍を経験されていますよね。
40代半ばで「黄昏」はまだ早い

上田:伊藤忠商事に入社してファミリーマートの社長になるまでの間に、会社を2つ経験しているんですよ。最初は食肉加工会社への出向。このときは本当に転職するような気持ちだったね。
小笠原:というと?
上田:子会社への出向だったから、業績を伸ばして会社を大きくすれば、その中で自分が社長になれるんじゃないかと半ば本気で考えていたよ。転籍しようか真剣に考えたくらい。伊藤忠に戻った後、プリマハムに行ったときは出向じゃなくて転籍だった。給料も社会保険料も全部プリマハムの基準でもらっていた。
ところが1998年に伊藤忠がファミリーマートの筆頭株主になったことで、突然、転籍を解除して戻ってこいという話になった。人生、何があるか分からないものだよね。
小笠原:ちょっと個人的な話をしてもいいですか?
上田:何だい?
小笠原:私の妻は金融機関に勤めているのですが、45歳になった年に、いわゆる「黄昏(たそがれ)研修」の対象になりました。50代前半で役職定年になると給料が何割減り、退職金と年金がいくらになるのか、年頃の社員を集めて説明するのだそうです。「人生の先が見えてしまった」と、どんよりした顔で帰ってきたのを覚えています。
上田:年齢に対する感覚が、業種によって違うのかもしれないね。金融機関は意外と早く判断するけど、伊藤忠やファミリーマートなどは45歳ぐらいが中核層だと考えている。出世の早い人は部長になっているだろうし、課長など会社員として一番活躍できるのはその年代だからね。そうした年代のモチベーションを下げるのは、企業としてはもったいない気がするな。
相談者さんは44歳だから、まだまだこれからチャレンジできる年齢です。出向するにしても転職するにしても、受け入れ先はあなたの能力に期待することでしょう。
周りを見たら、焦る気持ちが出てくるかもしれない。でもあわてて自分の人生を決める必要はないんじゃないかな。「並行して転職活動を進めている」と書かれているけど、結構なことだと思いますよ。当面は出向して様子を見ながら、可能性を探ればいい。もしかしたら出向先で気に入られて、ステップアップの道が開けるかもしれないよ。
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