上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、40歳手前で体に悪いところが見つかったという男性から。仕事のペースを落とすべきか悩んでいます。暴飲暴食を続けてきた上田さんは、自身の生活を反省しつつ、「仕事のペースは落とさずにできることはないか」と提案します。その意図は?
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悩み:同期で最初に管理職になり、海外赴任のチャンスにも恵まれました。これまで、全力で会社の期待に応えようと働いてきましたが、ここ数年で体にいくつか悪いところが見つかり、仕事のペースを落とすべきか悩んでいます。
30代後半の中堅社員です。若い頃から会社には様々なチャンスをいただき、それに応えるべく全力で努めてきました。同期一番で管理職になりましたし、当社では珍しい海外赴任もしました。周囲からは順風満帆に見えているように思います。
ただ、ここ数年、体に数カ所悪い所が立て続けに見つかり、ペースを落とすべきか否か悩んでいます(命に関わるものではありません)。周囲には話していませんし、正直に言えば、ペースを落としたくはありません。
上田さんも様々な激務を続けられてきたと思いますが、ご自身の健康とはどのように付き合ってこられましたか。
(38歳 男性 会社員)
大竹剛(日経ビジネス編集):バリバリやっていきたい、でも、健康も不安。健康第一だと理解していても、仕事は楽しいし、周囲からの期待もあって、ペースは落としたくない……。この方のような悩みを持つ方は、意外と多そうです。
上田準二:まずね、あなたは仕事が本当によくできる方のようですね。それだけ、会社からの評価も高いのでしょう。海外赴任などチャンスにも恵まれてきた。きっと、求められる仕事の要求レベルも高いのでしょう。
だから、知らず知らずのうちにいろいろと無理が重なっていたのかもしれません。
あなたは今38歳。まさしく、僕もあなたと同じような年齢の頃、今から振り返ればひどい生活をしていました。
大竹:上田さんのことですから何となく想像できますが、どんな生活をしていたのですか。
上田:40歳前後となると、仕事の面では脂が乗っているし、お客さんはどんどん増えている。北海道から九州まで、お客さんが月に何度も東京にいらして、僕はその都度夜遅くまで飲み食いで接待。日ごろ付き合いのある取引先も含めれば、ほぼ毎晩、夜遅くまで飲み食いをして、朝早くからまた別のお客さんを回るという生活を続けていたわけです。
その間に、お客さんのアテンドで海外出張に行くこともあった。そんな生活はいろいろ、体に無理がかかりますよね。暴飲暴食の上に過密スケジュール。健康診断を受けると、どれもこれも項目がひどい数値になるわけです。
大竹:A、B、C、Dとかで判定が出るやつですね。前年は問題なかったのに、急に「要再検査」なんて出ると、ドキッとします。
「不健康が勲章」のような働き方は過去のもの
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
上田:そうでしょう。普通はそこで、「あれ? おかしいな」とちょっと立ち止まるでしょう。きっと相談してくれたあなたも、今はそんな段階なのではないかな。
だけど、僕はちゃんと立ち止まることをしなかった。バカだったなと思うよね。
今からもう30年くらい前の時代ですよ。周りの先輩や同僚たちもみんな、暴飲暴食でひどい生活です。それが普通だと思っていて、健康診断の結果が来ても、不健康であることが仕事をしている証しみたいな風潮もあった。いろいろな項目の数値を言い合って、「俺のほうが悪いな」なんて笑い合ったりして。僕はその中でも、最も悪い部類だったなぁ。
僕はそのまま、健康をあまり省みることなく過ごしてきてしまったけど、お勧めできる生活じゃない。たばこも吸うしお酒も飲むから、気管支を悪くしたし、γGTPが異常値のような数値にもなった。
お医者さんからは、「日ごろだるくないですか?」「息切れや動悸(どうき)はありませんか?」とか、いろいろ聞かれたけど、だいたい当てはまった。「この数値がこのまま続くと45歳まで生きられませんよ」なんて脅されもしたよ。
大竹:よく生き続けましたね(笑)。
上田:なんとか74歳まで生き永らえてきたけど、結局、それはその頃からいろいろな薬を飲み続けて、何とかしのいできたというのが実態ですよ。
やっぱり、できるだけ薬は飲まないほうがいいんだよ。たまたま僕は生きているけど、体を壊してしまって思うように仕事をできなくなってしまった方もいる。
今、健康が気になるのなら、これを機会にしっかりと健康を意識した生活をし始めたほうがいい。僕のような生活を送ってはいけないよ。まあ、僕が言っても説得力はないと思うけど。
あなたも、これまでがむしゃらに仕事をしてきて40歳近くなり、いろいろと健康面でしわ寄せが来ているのでしょう。相談内容からはどこが悪いのかは分かりませんが、今は命に関わるものではないといっても、気をつけなければいけない。
大竹:新型コロナウイルスの感染でも、基礎疾患がある方のほうが重症化するリスクが高いそうですからね。
上田:健康には、本当に気をつけたほうがいい。定期健診はきっちり受けて、お医者さんの忠告や健康指導は守るようにしましょう。
大竹:この方は、仕事のペースも落としたほうがいいのかと悩んでいるようです。
上田:ここ数年で立て続けに悪いところが見つかった、ということだけど、どれほど悪いのかが分からないので、うかつなことは言えないな。だけど、この方がおっしゃるように、正直、仕事のペースを落としたくないというのは、その通りだと思うし、気持ちはとてもよく分かる。だから、今すぐ仕事のペースを落とす、という決断をするかどうかは、よく考えたほうがいいと思う。
仕事のペースを維持しつつ、健康面に配慮した生活をすることはまだ可能なのではないかな。もちろん、医者のアドバイスは聞いた上で、という前提ですが、もし、あなたが僕の若い頃のような生活をしているのなら、暴飲暴食をやめるとか、しっかりと運動もするとか、睡眠をよくとるとか、やれることはあるはずです。
今はちょうど仕事が面白いし、脂も乗っている時期。まずは、普段の生活習慣を見直して、懸念のあるところがこれ以上悪化しない、もしくは改善していくような対策をとることが先決でしょう。
ドクターストップがかかったのならばペースを落とすべきでしょうが、そこまでではないのなら、やりたい仕事をしないで我慢するのも、今度は心を害してしまいかねない。体だけではなく心も健康でありつづけることが大事です。そのために何ができるか、どのようなバランスをとるべきか、考えてみてはどうですか。
大竹:いきなりペースを落とすのではなく、ペースを維持しながらどのように健康を改善していくかを考えるということですね。
上田:繰り返しますが、相談の内容が緊急を要する健康問題ではないという前提での話ですよ。会社で働いていく以上、仕事のペースを落とすと、それがまた別の悩みの種にもなります。だから、まずは、食生活とか運動習慣とか、改善できることから着手して、健康な体を取り戻せるように工夫してみましょう。
読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
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*この連載は毎週水曜日掲載です。
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