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上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談者は、不仲の両親の顔色をうかがって大人になり、今は強烈な祖母からかけられた「呪いの言葉」に悩んでいる女性です。上田さんは、「『親離れ』できるかどうかはあなた次第」とアドバイスします。

※読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。

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悩み:父方の祖母から結婚式の時に「あなたはお父さんを見捨ててはいけない」とささやかれた言葉が、呪いのように思い出されて困っています。両親は不仲で既に離婚していますが、その原因もきっと祖母。私はこの呪縛から自由になれるのでしょうか。

 はじめまして。いつも楽しく読ませていただいております。上田さんのお仕事に対する姿勢や気の持ちようがとても刺激になるし、心も軽くしてもらえて、とても勉強になっています。

 さて、しかしながら今回は家族のことで相談させてください。私は小さい時から、家族のことで苦しい思いをしていました。よくある話ですが、両親は不仲で長らく仮面家族でした。私は両親の間を取り持ちつつ、それぞれの意向や要望を調整し、調整内容の責任を取るということを長らくしてきました。そのため、私が大学生になり家を出たところ、両親の関係はさらにうまくいかなくなり、責任を取るように求められたこともあります。

 私にとって実家というものは、一緒にいるのに孤独で、自分を押し殺さなければならない場所でした。精神的に両親にしがみつかれているように感じていました。そして小さい頃、「どうして両親はこうなってしまったのだろう?」ということを考えてみたとき、両親の両親、つまり祖父母の影響があると気がつきました。

 特に父方の祖母が強烈で、私の結婚式の日に耳元で「あなたはお父さんを見捨ててはいけない」と繰り返しささやいてきました。その言葉は、何とかして私を縛り付けようとしている呪いの言葉のように聞こえ、私はどうにも気が重くなりました。

 今、私は経済的にも自立して結婚もし、両親とはさらに距離ができたので、私の両親に対する心は穏やかになりました。そして、いよいよ両親は離婚することになりました。「これで母は強烈な姑(しゅうとめ)から逃れられるのだな」とちょっとほっとすると同時に、女手がなくなったため孫である私に、祖母の介護のお鉢が回ってくるのではないかとか不安に思います。そして、結婚式の時のあの呪いのような言葉がよみがえってくるのです。

 結婚に伴うお祝い事では、相場から見ても高額なお祝い金をいただくのですが、それをもらうと祖母の言うことをこの先、ずっと聞かないといけないような気持ちになります。かといって、断ることもできません。

 お仕事をされていく中でも、他人から足を引っ張られるような、心ない言葉をぶつけられるような出来事がありますよね。心を暗くする言葉をはねのけるようなアドバイスがいただけたら幸いです。

(29歳 女性 主婦)

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

上田準二:うーん、呪いのような言葉、ですか……。

大竹剛(日経ビジネス編集):父方の祖母が結構、強烈な方ということなのでしょうね。

上田:呪いのような言葉以前に、あなたが大人になるまで両親と家庭で過ごしてきた記憶が、あなたに取りついてしまっているんですね。

大竹:なんだか、トラウマ的な感じになってしまっているのかもしれません。

上田:でも、両親も離婚しているわけですから、客観的に見て今こそ、この呪い、呪縛からあなたは解放されるべきなんです。解放というのはどういうことかと言うと、相手が解放してくれるわけではなく、あなた自ら、この呪縛から逃れる考え方に変るべきなんです。

 動物を見てください。親離れ、子離れ、という時期が必ずくるでしょう。人間社会だって、全く同じですよ。それが必ずあるにもかかわらず、あなたはその節目を乗り越えられていない。あなた自身が親離れをすることです。

 ご両親も離婚をし、当然、子離れを覚悟しているわけです。

 年齢を見ると、あなたは29歳ですよね。

大竹:ちょうど最近、結婚もしたようです。

上田:あなたの年齢からご両親の年齢を想像すると、おそらく僕よりも若い世代ですよ。

 明治とか大正とか、そういう昔の時代だったら、親が年を取ったら子供が全ての面倒を見るという世の中だったかもしれないけれども、近年はそうではないでしょう。僕だって、そんなことはこれっぽっちも思っていないよ。

 親は親、子供は子供。子供が一定の年齢に育ってくれば、住む世界は違ってくるんです。まして、子供が成人したら親元から巣立っていくんです。だから、年を取ったら何から何まで子供に面倒を見てもらうという時代ではないんです。それはご両親だって分かっていると思います。

大竹:だから、両親のことはそれほど気にしなくていいということですね。

上田:問題はこの祖母。呪いのような言葉であなたに呪縛をあたえてしまった。だけど、そもそも、祖母の面倒をどうするかということを考えるのは孫のあなたの役目ではなくて、両親なんですよね。離婚しているのであれば、祖母の息子、あなたの父親が考えることです。

 父親だって、どのように面倒見るかといったら、自分のできる範囲内、自分の能力、自分の領域でしか無理なんです。だからあなた自身も、自分の両親に対しては血のつながった家族として、何かの折に自分のやれる範囲でケアをすればいい話であって、必要以上に何でもかんでも想像しながら自分がやらなきゃいけないのかと悩む必要は、毛頭ありません。無理をすれば、双方に不幸を招きますよ。

 あなたはそんな呪縛から、自らを解放する行動や考え方をしてください。