主張が足りない!

大竹:相談内容からは有給休暇をどれくらい取得できているのかは分かりませんが、忙しそうですから、あまり取得できていないのかもしれません。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

上田:きっと、あなたはこの会社にとって欠かせない人になっているんですよ。「月の半分、ひどいときは3カ月連続出張というのは、さすがに心身ともにきついです。私も頑張れるだけ頑張りたいのですが、このままでは持ちません。何とか改善してほしい」とはっきり意思表示をしましょう。

 それと同時に、有給休暇もしっかり取る。これに対しては、会社側はノーとは言えません。労働者の権利ですから。今の状態は心身ともにつらい、というのを態度でも示しましょう。

大竹:そもそも会社は、人員の余裕がない、と言っているようですから、有給休暇も取得しにくい雰囲気なのではないでしょうか。

上田:そうだろうね。だけど、このままの状態を続けていて体を壊してしまったら、それこそ定年まで楽しく働きたいという、そもそもの希望はかなえられなくなってしまうよ。

 だからこそ、会社に抵抗するんじゃなくて、有給休暇という制度も使いながら、少しでも状況が改善するよう、会社に働きかけるんです。

 きっと、これまで長期の出張をいとわずバリバリ働いてきたあなたは、上司からも会社からも現場を回す上で欠くことのできない人材と見られています。40歳は働き盛りだからね。

 一方で、40歳を超えた頃から、体力の衰えを感じることは増えていきます。仕事の疲れが残りやすくなるとか、若い頃のように徹夜ができなくなるとか、出張がつらくなってきたとか。きっとあなたもそうでしょう。

 そういう状況を抱えている人は、あなただけではないし、これから増えていくと思います。だからこそ、会社のためと思って、あなたが直面している状況を何とか変えられるよう、粘り強く働きかけましょう。今、この状況を変えられなければ、この先20年、あなたが定年退職するときまで、この会社が成長し続けることができるか怪しいですよ。

大竹:このままだと、会社も持続的ではないということですね。

上田:有給休暇もしっかり取って、会社に負荷軽減の提案もしっかりして、それでも、改善の兆候が見られないのであれば、給料が下がってでも転職するしかありません。ただ、まだもう少し粘ってみては? その間に、転職エージェントからいい話が出てくるかもしれない。

大竹:最近ではリモートワークが普及しはじめていますが、この方のように現場主義を貫いている会社だと、出張で現場に行く必要があったり、リモートワークができなかったり、そうした職場も少なくないですね。

上田:そうだね。実際に現場に行かなければ回らない仕事は山ほどあるよ。そうした人たちが、経済を回しているんだ。だからこそ、そこに過重な負荷がかからないよう、会社側は考えていかなければいけない。

 繰り返しになりますが、しっかり主張しましょう。「このままでは体が続きませんから、出張が長期化するのであれば、ローテーションを組んでくれませんか。私1人では、これだけの仕事はこなせません」と。現場主義ということは、まさしく人員の割り振りの問題なんです。

大竹:この方は、「出張を除けば、特に不満はない」と言っています。会社もきっと、分かっているのではないですか? この方がずっと、そういう働き方を続けられないことは。

上田:恐らくね。会社は、人員に余裕がないと言っているでしょう。裏を返せば、あなたに辞めてもらったら困るんです。そういう状況を客観的に判断した上で、あなた自身のことをもう少し主張しましょう。

大竹前回の昇進のチャンスが巡ってこないという悩みもそうでしたが、全体的に主張が弱いんでしょうか。

上田:弱いよね。だから、みんな悩みを抱えちゃうんです。

大竹:上田さんはどうでしたか? 

上田:僕は、自分で「これは達成しなければいけないミッションだ」と思ったら無理してでもやってきた面はあるけれども、「こんなものやっていられないわ」と思ったら、もう徹底してやらなかった(笑)。上司から怒られても、評価が下がっても、クビにはならんと。

大竹:多くの人は、そこまでずぶとくなれなそうです……。

上田:でも、納得できないことを、主張もせずに抱え込んだら、心身ともに壊れてしまうよ。まずはもう少し主張してみましょう。そうしたら、会社との関係が少しずつ変わっていきますから。

読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。

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*この連載は毎週水曜日掲載です

本連載「お悩み相談~上田準二の“元気”のレシピ」が本になりました! 反響の大きかった話を中心に、上田さんのアドバイスをぎゅぎゅっと編集して詰め込みました。その数、全35個。どれも読むだけで元気になれるアドバイスばかり。上田さんの“愛”がたっぷりのお悩み相談本となっています。ぜひお手に取ってみてください。

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