主張が足りない!
大竹:相談内容からは有給休暇をどれくらい取得できているのかは分かりませんが、忙しそうですから、あまり取得できていないのかもしれません。

上田:きっと、あなたはこの会社にとって欠かせない人になっているんですよ。「月の半分、ひどいときは3カ月連続出張というのは、さすがに心身ともにきついです。私も頑張れるだけ頑張りたいのですが、このままでは持ちません。何とか改善してほしい」とはっきり意思表示をしましょう。
それと同時に、有給休暇もしっかり取る。これに対しては、会社側はノーとは言えません。労働者の権利ですから。今の状態は心身ともにつらい、というのを態度でも示しましょう。
大竹:そもそも会社は、人員の余裕がない、と言っているようですから、有給休暇も取得しにくい雰囲気なのではないでしょうか。
上田:そうだろうね。だけど、このままの状態を続けていて体を壊してしまったら、それこそ定年まで楽しく働きたいという、そもそもの希望はかなえられなくなってしまうよ。
だからこそ、会社に抵抗するんじゃなくて、有給休暇という制度も使いながら、少しでも状況が改善するよう、会社に働きかけるんです。
きっと、これまで長期の出張をいとわずバリバリ働いてきたあなたは、上司からも会社からも現場を回す上で欠くことのできない人材と見られています。40歳は働き盛りだからね。
一方で、40歳を超えた頃から、体力の衰えを感じることは増えていきます。仕事の疲れが残りやすくなるとか、若い頃のように徹夜ができなくなるとか、出張がつらくなってきたとか。きっとあなたもそうでしょう。
そういう状況を抱えている人は、あなただけではないし、これから増えていくと思います。だからこそ、会社のためと思って、あなたが直面している状況を何とか変えられるよう、粘り強く働きかけましょう。今、この状況を変えられなければ、この先20年、あなたが定年退職するときまで、この会社が成長し続けることができるか怪しいですよ。
大竹:このままだと、会社も持続的ではないということですね。
上田:有給休暇もしっかり取って、会社に負荷軽減の提案もしっかりして、それでも、改善の兆候が見られないのであれば、給料が下がってでも転職するしかありません。ただ、まだもう少し粘ってみては? その間に、転職エージェントからいい話が出てくるかもしれない。
大竹:最近ではリモートワークが普及しはじめていますが、この方のように現場主義を貫いている会社だと、出張で現場に行く必要があったり、リモートワークができなかったり、そうした職場も少なくないですね。
上田:そうだね。実際に現場に行かなければ回らない仕事は山ほどあるよ。そうした人たちが、経済を回しているんだ。だからこそ、そこに過重な負荷がかからないよう、会社側は考えていかなければいけない。
繰り返しになりますが、しっかり主張しましょう。「このままでは体が続きませんから、出張が長期化するのであれば、ローテーションを組んでくれませんか。私1人では、これだけの仕事はこなせません」と。現場主義ということは、まさしく人員の割り振りの問題なんです。
大竹:この方は、「出張を除けば、特に不満はない」と言っています。会社もきっと、分かっているのではないですか? この方がずっと、そういう働き方を続けられないことは。
上田:恐らくね。会社は、人員に余裕がないと言っているでしょう。裏を返せば、あなたに辞めてもらったら困るんです。そういう状況を客観的に判断した上で、あなた自身のことをもう少し主張しましょう。
大竹:前回の昇進のチャンスが巡ってこないという悩みもそうでしたが、全体的に主張が弱いんでしょうか。
上田:弱いよね。だから、みんな悩みを抱えちゃうんです。
大竹:上田さんはどうでしたか?
上田:僕は、自分で「これは達成しなければいけないミッションだ」と思ったら無理してでもやってきた面はあるけれども、「こんなものやっていられないわ」と思ったら、もう徹底してやらなかった(笑)。上司から怒られても、評価が下がっても、クビにはならんと。
大竹:多くの人は、そこまでずぶとくなれなそうです……。
上田:でも、納得できないことを、主張もせずに抱え込んだら、心身ともに壊れてしまうよ。まずはもう少し主張してみましょう。そうしたら、会社との関係が少しずつ変わっていきますから。
読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
*この連載は毎週水曜日掲載です
本連載「お悩み相談~上田準二の“元気”のレシピ」が本になりました! 反響の大きかった話を中心に、上田さんのアドバイスをぎゅぎゅっと編集して詰め込みました。その数、全35個。どれも読むだけで元気になれるアドバイスばかり。上田さんの“愛”がたっぷりのお悩み相談本となっています。ぜひお手に取ってみてください。
『とっても大きな会社のトップを務めた「相談役」の相談室』は、絶賛発売中!
◇概要◇
『とっても大きな会社のトップを務めた「相談役」の相談室』
<第1章 人間関係に効く>
Q 上司の顔色ばかり見る組織に辟易/Q 上司が危機感を持っていない/Q 理不尽な部長の罵倒に耐えられない、など9個
<第2章 自分に効く>
Q 成長できる「前の職場」に戻りたい/Q もうここで「昇格」は終わり?/Q いいかげん、ぎりぎり癖を直したい、など15個
<第3章 恋愛・生き方に効く>
Q 安定した仕事を持つ男性の方がいい?/Q 出産のタイムリミットが近づいて/Q 年収も家柄も良いのに婚活失敗、など11個
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「お悩み相談~上田準二の“元気”のレシピ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?