全3625文字

上田準二さんの「お悩み相談」。 今回は、秘書業務や海外企業への営業などを手掛けるものの、これといった軸がないと悩む38歳女性から。得意の外国語を生かして仕事をしているものの、何事も中途半端だとモヤモヤとした気持ちを抱えています。上田さんは「焦る必要はない」とアドバイスします。

悩み: 中小メーカーに勤めています。得意の外国語を生かして仕事をしているものの、これといった軸がなく、胸を張って「これをやっている」と言えるものがありません。やりがいを見つけられないまま、モヤモヤとした気持ちを抱えているのが恥ずかしいです。

 いつも的確なアドバイスをされるので、毎回楽しみに読ませていただいております。

 私は現在とある中小のメーカーに所属しています。仕事内容は一言では表せず、得意の外国語を生かして海外企業への営業やマーケティング「みたいなこと」を担当したり、社内の総務や秘書の「ようなこと」を担当したり、とはっきり言って自分でも何を軸に仕事をしているのか分かりません。どれを取っても中途半端な状態で、胸を張って「これをやっています」というものがありません。

 かといって、自分が何をやりたいか、この会社で何に貢献できるか分からず、ただ無駄な時間を過ごしながらお給料をもらっていることにモヤモヤとした気持ちを抱えています。もういい年齢になっているのにこんな悩みを持っていること自体が恥ずかしいのですが、このまま自分にとってのやりがいが見つからないまま毎日を過ごしていくことがつらくなってきました。

 転職を2回経験していることもあり、会社を変えたからといって変わるものでもないと思う気持ちもあります。どうしたら、このような状況を打破できるのか、何かアドバイスをいただけないかと思っています。

(38歳 女性 会社員)

大竹剛(日経ビジネス編集部):この方も、先日の「will」がないと悩んでいた方と同じように、何かを成し遂げなければ、と思いながら、これといって胸を張れることをしていないという、焦りにも似た気持ちを抱いているようです。

(関連記事:「やりたいこと」はなくていい。40代以降は「will」より「shall」

上田準二:私から見たらね、あなたは秘書業務もこなせるし、語学力もあって海外企業への営業やマーケティングの仕事もしている。すばらしいと思うけど。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

大竹:でも、これといって何か軸のようなものがない、コアの仕事が何か分からなくなってしまっているようです。

上田:あなたにとっては、会社でやっている秘書業務も海外企業への営業も、すべてがコアの仕事なんですよ。

大竹:やっていることすべてを、そう思った方がいいということですか?

上田:そう。会社にとっても、周囲の同僚にとっても、あなたは必要な人なんですよ。だから、いろいろなことを頼まれる。そもそも、中小企業では、普通は1人何役も仕事をこなさないと会社は回らないものです。秘書も海外企業への営業も、どちらもしっかりこなせることが、あなたの能力であって才能なんです。そこに、やりがいを見いだしてほしいですね。

 あなたは、ほかに何かやりたいこと、情熱を注げることが何かあるのではないかと探している。ところが、やりたいことがはっきりとあるわけではないのでしょう。ただ、今やっている仕事に対して、まだほかのことをやれるんじゃないか、まだ出合っていない「天職」があるのではないかと考えている。

 だけどね、「やりたいこと」なんて、多くの人にとってそんなにすぐに見つかるものではないよ。それに、それがあったとしても、様々な事情からできない場合だってある。

 従って、やりたいことが見つかっていない以上、今やっていることが、あなたの今時点の天職であると思って、それに集中して取り組んでいきましょう。そのうち、あなたが本当にやりたいことが自分自身の中で見えてきたら、会社の中で、そういった業務があるのかを確認してみましょう。もし、あるのであれば、そこへの異動をお願いしたらいいでしょう。それができないのであれば、あなたのやりたい仕事ができる転職先を、これまでのキャリアを生かしながら探したらどうですか。進むべき道は、これしかないでしょう。

大竹:そうですね。やりたい仕事を探さなければと焦る気持ちばかり大きくなって、今やっている仕事がおろそかになってしまったら、周囲から頼られなくなってしまいます。

上田:だから、多くの場合、「やりがい」なんていうものは、自分が意識して生み出せるものではないんです。今、自分が置かれている場所で一生懸命、元気に明るく、目の前にある仕事をしていくことが、やりがいにつながっていくものなんです。それでもやりがいにつながらないのであれば、ほかにやりたいことが見つかるまで、今の仕事に集中しながら先を考えていきましょう。

 やりがいは、追いかけてばかりいたら、逃げていきますよ。