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上田準二さんの「お悩み相談」。 今回は、繰り返しケアレスミスをしてしまう女性の悩み。ミスをした原因すら思い出せないと悩んでいます。上田さんは「宇野ヘディング事件」を引き合いに出し、「珍プレー」をなくす心構えを助言します。スポーツも仕事も、練習(チェック)と笑顔が欠かせない。

悩み:仕事でのミスがなくなりません。ルーチンワークのケアレスミスは色々対策したことで減りましたが、それ以外では理由が全く分からないようなミスをしており、困っています。どうしたら自信を持って仕事をすることができますか。

 メーカーで設計の仕事をしています。4年目になりますが、仕事でのミスがなくならず、全く自信が持てません。もともとケアレスミスが多く、自分なりに対策した結果、ルーチンワークのミスは少なくなりました。

 気に病んでいるのは、なぜ起きたのか分からないミスについてです。仕事柄、数字を扱いますが、先日ある資料に記載した数字が間違っていました。自分が作成した資料にも関わらず、なぜその数字を記載したのか、全く覚えていません。どうして間違えたのか、色々なパターンを考えましたが、どのようにしてもその数字になりません。しかも、1カ所だけでなく複数カ所……。

 上司に説明するときの、情けなく申し訳ない気持ちは、これまで感じたことがありませんでした。ここ1年ほど、周りと比べて焦る気持ち、職場の人間関係に対するストレスを強く感じてきました。この仕事や職場は、全く自分に向いておらず、続けても迷惑をかけるだけでは、と感じてしまうのです。そんな折、先のミスが発覚し、もやもやした気持ちが爆発しそうです。

 自分に自信が持てず、またミスをするのではと常に不安です。こういったミスは、誰でも経験するのでしょうか。また、どのように自信を持って仕事を続ければいいのでしょうか。

 明日からも元気に仕事に行けるよう、アドバイスをいただけると幸いです。

(30歳 女性 会社員)

大竹剛(日経ビジネス編集):ミスがなくならないという悩みは、これまでも何度かありましたが、この方は自分で色々と対策してルーチンワークのミスは減らしたそうです。なかなかの努力家だと思います。ただ、ルーチンワークにおけるミスは減ったけれども、最近、自分でも理由が分からないミスをしてしまっているとのこと。

 偉いなと思うのは、何でそのミスが起きたのかということを、自分でしっかり考えようとしていることです。でも、それでも分からないミスがある。背景には、職場の人間関係とか、焦る気持ちみたいなものがあるんじゃないかと、うすうす感じているようです。

上田準二:まずね、ミスの原因が分かっていたら、ミスなんてしないんですよ。ミスというのは、原因が分からないからミスをするんです。

大竹:なるほど。ミスをする原因が分かっていたら、そもそもミスなんてしない。

上田:だから、ここでどんどんミスの原因は何だったのかと深く考え込んでしまって、ミスに対する恐怖感ばかりが大きくなってしまうと、逆にミスを誘発することにもなりかねない。それが今、あなたが置かれている状況ではないかな。

大竹:ミスに対する恐怖感がミスを誘発する。

上田:ミスというのは、その原因が分からないからミスをする。分かっていればミスはしません。だから、まず気持ちをリセットしましょう。スポーツ選手でもそうでしょう。

 ゴルフでも野球でも。野球で凡フライをキャッチできずにボールを落とす。なぜ、そんなミスをしたのか、記憶がない、ということだってプロ選手でもあるわけです。記憶がないというのは、ミスを怖がって忘れたいから、記憶がなくなるんですよ。

 中日ドラゴンズに宇野勝さんというすばらしい選手がいたでしょう。

 大竹さんは知らないかもしれませんが、ものすごくいいバッターだったんです。1981年夏のある日、巨人戦でね。もう、センターの凡フライ、ふらふら飛んでいったボールですよ、中学生でも取れるような。それを、プロの一流選手である宇野選手が、頭で受けたんです。まるでヘディング。「宇野ヘディング事件」なんて言われたほど話題になった。そこからテレビで「珍プレー・好プレー」という分野が定着したほどだから。

 観客から見たら本当にイージーなミスだけど、本人もどうして頭でボールを受けたのか、本当の理由なんて分からなかったのではないかな。これでもうゲームセットだと思っていたときに、何かほかのことを考えてしまったとか、凡フライだから何も考えずにグラブを上げればボールは入るものと思ってしまったとか、色々と考えられる理由はあると思いますが、プロ選手でも、そうしたミスをすることはあるんです。後から、これが原因だったのではないかとか想像はできますが、ミスをしたその瞬間、なぜミスをしたのか、本当の原因は特定できるものではありませんよ。

 それは、スポーツでも仕事でも同じことです。とにかく、ボールを頭で受けてしまった、間違った数字を書いてしまった……。それはもう事実として、受け入れるしかありません。

 またやるんじゃないか、またやるんじゃないか、と恐怖感が大きくなると、案の定、またイージーエラーをする。そういう負の循環に入ってしまうものです。

 そうならないようにするには、その恐怖に立ち向かって、トラウマから抜け出さないといけません。スポーツなら、普段からしっかりと練習するしかありません。凡フライだって甘く見ず、しっかり練習する。仕事なら、「大丈夫だろう」と思い込む前に、しっかりと見直す。もうこれで最後、というときに、念のためもう一度チェックする。そういうことを繰り返して、トラウマを克服するしかありません。