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上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、海外駐在で現地の上司と衝突してしまった女性から。本社の方針との板挟みで、精神的に病んでしまいました。上田さんは「馬が合わない」のではなく、「馬は合わせるもの」とアドバイス。その方法とは?

悩み:海外赴任をした際、現地の上司と馬が合わず精神的に病んで帰国しました。その上司は本社に採用される可能性のない大きな案件しか頭になく、本社との交渉を私に押し付け、「やったのか」と迫るばかり。現地の上司と本社との板挟みの中、どのように振る舞ったらよかったのでしょうか。

 海外赴任をしていたとき、直属の現地の上司と馬が合わずけんかになり、日本人の上司にも間に入ってもらえず、精神的に病んだことを理由にそのまま日本に返されることとなりました。現地の上司は、自分の利益につながる大きな案件しか頭にないようで、私は「他にも緊急の案件があるので優先順位を変えたい」「期限を来週に延期してもらえないか(本当の期限は来週までにも関わらず、今週までにやれと理由もなく押し付ける)」などと話をしても、「絶対にダメだ」と聞いてくれませんでした。

 日本の本社にいたときに、この現地の上司が進めようとしている案件は「採用される可能性はない。諦めるべきだ」とはっきり言われていたため、その内容をていねいに説明したのですが、全く分かってもらえません。現地の上司本人は私と一緒に日本と交渉しようともせず、本社を説得できるはずのない大きな案件を私に押し付けては、「やったのか? やったのか?」と追い詰めるばかりでした。

 とうとう私は精神的に病んでしまい、会社に行くのをやめてしまいました。結局、そのことを理由に日本人上司からも邪魔者扱いされ、本社に送り返されることとなりました。

 一番下っ端の私がトカゲのしっぽを切るように日本に送り返されるのは正直、納得がいきません。何か私にできることはあったのでしょうか。それとも、ただただ従っておけばよかったのでしょうか?

(28歳、女性、会社員)

大竹剛(日経ビジネス編集):駐在員というのは難しい立場に置かれることも多いですよね。現地の方針と本社の方針の板挟みになることも少なくないのではと思います。

上田準二:まず、若いあなたには、これを1つ経験、学習として、これからの仕事に生かしてほしいということを、最初に言っておくよ。精神的に病んでしまったということだけど、そもそも駐在員というのは難しい立場に置かれることが多いものだよ。だから、若くしてそれを経験したということは、これからの人生において絶対にプラスになりますよ。

 さて、その上でビジネスパーソンの行動原理を考えれば、多かれ少なかれ、誰だって会社で大きな利益が上がる案件、より大きな案件を手掛けたいと思うものだよ。それは、日本でも海外でも同じです。そういう上司の姿を見て、自分の利益や出世のことばかりだというように考えるのは、少し考えすぎだと思いますよ。もちろん、その案件がうまくいけば出世につながるかもしれませんが、より大きな利益が上がる案件を重視するのは、当然のことです。

 一方で、あなたは緊急の案件を抱えていたというけれども、あくまでもあなたはチーム、組織の一員ですから、あなたが緊急と考えていることよりも上司が優先すべきだと考える仕事があるのであれば、あなたはその判断に従うべきなんですね。

大竹:なるほど。それが組織というものですか。

上田:そうだね。上司がより広い視点で物事を見たときに、「こちらを優先すべきだ」と考えたのであれば、組織としてはその判断に従うものです。そうでないと、組織はまともに動かないよ。

 その上で、今回の状況を考えてみましょう。