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上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、コロナ対応で会社への不満が増幅してしまっている33歳の男性から。かつて不正会計問題を起こしたことがある会社で、そもそも経営陣への信頼感がありません。ただ、上田さんは、相談者の気持ちの持ち方にも問題があるのではと問いかけます。

悩み:一時帰休を実施していることを公表せず、期初の計画通りの業績達成にまい進する会社に不信感が募っています。かつて、不正会計の問題を起したこともある会社で、経営の在り方に疑問を感じます。

 あるメーカーの営業をしています。新型コロナウイルスの影響で、出社人員を削減するとともに、業績悪化によって一時帰休を実施することになりました。

 私も今は週3日勤務になっています。こうした対応は理解できるのですが、会社は一時帰休をしている事実を社外に公表しておらず、生産や営業の目標・計画には全く変更がありません。そのため、仕事量は今までと変わらず、仮に増えていたとしても週3日で成果を出すことを求められています。この状況で仕事があるのは幸せなことですが、週3日で終わるはずはなく、サービス勤務状態になっています。

 私の会社は以前、不正会計の問題があり、コンプライアンスを口酸っぱく指導されてきました。にもかかわらず、今回、一時帰休を公表せず、経営目標の達成に大きなリスクがある状況を隠しつつ、目標の達成を現場任せにする姿勢に疑問を思っています。また、「何がなんでも目標達成するんだ」という意識が強すぎて、「新型コロナウイルスを言い訳にするな!」という経営陣が発するメッセージにも疑問があります。

 事実をしっかり認識して、今できることの優先順位やバランスを判断することこそ、危機に対する経営の向き合い方なのではないでしょうか。

(33歳 男性 会社員)

上田準二:週3日勤務になったということですが、この方は誰に対してそのことを公表しなくてはいけないと思っているのだろう。

大竹剛(日経ビジネス編集):プレスリリースなどで社外に公表するという意味なのだと思います。

上田:今、中小企業も含めて、多くの企業がテレワークや一時帰休といった新型コロナ対策をしていますよね。それを全て公表しているかといったら、必ずしもそうではないでしょう。コロナ対策を公表しなければいけない、というコンプライアンス(法令順守)上の必要性もありませんよね。

 もちろん、従業員やその家族、取引先、そして地域社会との関係などを考慮すれば、コロナの感染拡大を防止するために企業がどのような取り組みをしているのかを公表した方が望ましいでしょう。

 ただ、この相談で僕が気になるのは、あなたの会社への信頼感が乏しいということです。あなたは会社の対応に不満を持っているけれど、会社側が業績をできる限り落とさずに頑張ろうという掛け声を発すること自体は、悪いことではないと思う。

 在宅勤務や週3日勤務で、これまでと同じ目標を達成するのは難しいだろうし、達成できなかった際の責任を社員に取らせるような言動は、大企業の経営者としてはあり得ない。もし、本当にそのような言動を経営陣がしているのなら、それはひどい。かつて、不正会計の問題を起こした会社ということだけど、コロナ禍の中で強引に目標を達成させるように現場にプレッシャーをかけるような状況が続いているとしたら、それは経営体質が改善されていないとも言えるかもしれない。

 でも、その一方で、危機的な状況を乗り切るために、何とか頑張ろうというメッセージを発信することは、会社側としては必要なことでしょう。そのメッセージを懐疑的に受け止めてしまうというのは、あなたの会社側への信頼感がなさ過ぎるということも言えると思うんです。

大竹:なるほど。現場に責任を押しつけるような経営陣の言動にも問題はあるけれど、現場側の会社への信頼感が乏しいことも問題だというわけですね。危機を乗り切るには現場も頑張らないといけない。

上田:僕があなたに期待したいのは、会社が大変な状況にある中で、ここは頑張ってみようと思うことです。会社のために、週3日勤務でも期初の目標を達成するためにここは頑張ろうというふうに考えた方が、あなたも前向きな気持ちになれるのではないかな。

 今は、会社も厳しいけれど、一人ひとりの生活にも大きな変化が起きていて、誰にとっても試練の時だよ。そんなときに、自分が何をできるのか考えてみる。「会社のため」と考えると、普段からの経営陣への不信感が邪魔をして前向きに仕事に取り組む気持ちになれないのかもしれないけれど、「社会のため」ともう一段高い視点に立ってみてはどうかな。あなたの頑張りが、コロナに負けずに社会を動かし続けることの1つの力になるのだから。