上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、コロナ禍を受けて社長から在宅勤務要請を受けた47歳男性から。周囲を見渡すと、在宅要請されたのは3人だけ。これは戦力外通告ではないかと悩んでいます。上田さんは「しっかりと自分が置かれている状況を理解し、自分自身を見つめ直すきっかけにしよう」と助言します。

悩み:コロナ禍を受けて、社長から在宅勤務の要請を受けました。仕事の内容的に在宅でできることはほとんどありません。にもかかわらず、在宅をしろと言われたということは、私は会社にとって不要な人材だということでしょうか。

 最近のコロナ禍の中、唐突に社長から在宅勤務を言われました。肩書は営業ですが、顧客対応に加え、マーケティング、開発などと節操なくやっておりますので、在宅勤務は無理と回答しました。会社にテレワークの仕組みがあれば別ですが、ないので家でできることはほとんどありません。

 ほかの社員はリスク分散のため、働く場所の変更などをしていますが、基本はオフィス勤務です。私のほか、2人ほど在宅勤務の人がいましたが、皆、再雇用者で、もともとフル勤務ではありません。しかも私は車通勤で通勤時の感染リスクも少ないので、正直、「なぜ?」という感じでした。

 しかし改めて、在宅でできることだけをやり、できないことをやめることを想像してみると、それでいいのであれば、社長は私のことを不要だと言っているのだな、と感じました。大げさかもしれませんが、今の社長が就任して以来、ずっと対立しているもので、花粉症のように臨界点にきているのかな、と。転職を本気で考えた方が良いのでしょうか。

(47歳 男性 会社員)

大竹剛(日経ビジネス編集):今回お悩みに入る前に、ちょっとだけご報告です。

上田準二:ん? どうしたの?

大竹:2017年3月1日、まさに上田さんがファミリーマート(当時はユニー・ファミリーマートホールディングス)の相談役になったその日からスタートしたこのコラムも、今回で150回目となりました(第1回は「東京者は、恋愛も仕事も刹那的だ」という内容でした)。

上田:もうそんなになるんだね。

大竹:最初は、ちゃんと相談が寄せられるのかどうか。どこまで続けられるのかどうかと不安もありましたが、読者の皆さんに支えられて150回となりました。相談も途切れることなく寄せられています(皆さんのお悩みは記事最後で募集しています)。

上田:それだけ悩みが多いということだね。仕事でもプライベートでも、生きていくと悩みは尽きないよ。でも、くよくよしていても仕方がない。少しでも前向きになってくれるとうれしいね。

大竹:当時は会社の大きな会議室で取材の延長のようなスタイルでお話をお伺いしていましたが、昨年、相談役を退任されてからは個人として相談に乗ってくださっています。今日もそうですが、まさか上田さんのご自宅からiPadのFaceTime(ビデオ通話)で相談に乗ってもらうようになるとは、夢にも思いませんでした。

上田:コロナのようなことが起きるとは、思いも寄らなかったからね。意外と便利だね、これ。だけどやっぱり外に出て、実際に会って話したいな。

大竹:そうですね。緊急事態宣言も解除されたので、もうしばらくの辛抱ですよ。

 さて、そろそろ今日のお悩みに参りましょう。今日の相談は、そのコロナの影響で広がっている在宅勤務にまつわる悩みです。社長から在宅勤務を命じられたのですが、実は在宅せよと言われたのは3人だけ。ほかの社員は基本的にはオフィス勤務だそうです。この方は、自分は会社にとって必要のない人材なのか、と悩んでいます。

厳しいかもしれないが現実を直視しよう

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

上田:この会社の社員の中で在宅勤務を要請されたのは3人だけですよね。この方を含めてあと2人。しかも、その2人はフルタイムの勤務ではない。それ以外の方は、基本的にオフィスで働いているわけです。

 この相談の内容から判断すると、客観的に申し上げて、この3人はオフィスに来なくても会社の仕事は回っていくと社長は判断していると思います。しかもあなたは、この社長とは、就任以来ずっと馬が合わないとも言っています。あなたもうすうす感じているように、ご自身が置かれている状況を冷静に判断すべきだと思います。

 従って、転職すべきかどうか、という相談に関しては、まずこのコロナ禍がある程度収束してきた段階で、会社、つまり社長があなたに対してどう対応するかを見極めた上で、転職するかどうかを考えた方がいいと思います。

大竹:つまり、在宅勤務の指示が解除されないとか、社長との関係がギクシャクしたママなのであれば、転職を考えてもいいということですか。

上田:そうです。会社から今のような扱いを受けたまま働き続けるのはつらいでしょう。

 気になることが1つあります。それは、「肩書は営業ですがいろいろなことを節操なくやっている」という言い方をしていることです。

大竹:どういうことですか?

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