上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、反抗期の中学2年生の息子のことを心配する母親から。何事にもイラつく息子。このまま大人になったらまともな社会人生活を送れるのかと案じています。上田さんは「心配ご無用」と言い切ります。
悩み:自分と関係のないことにも過剰に腹を立てる中学2年生の息子のことが心配です。このまま大人になると、面倒臭い大人になってしまうのではないでしょうか。
先日、社長が若手を育成しない、社長を尊敬できないと相談させていただいた者です。相談に乗っていただきありがとうございました。「会社へ恩を返すことにとらわれ過ぎている」「もう恩は返した」と指摘してくださったことで、視線を変えることができました。すぐにというわけにはいきませんが、4年計画で独立に向けて動こうと考えています。ありがとうございました。
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さて、またしても相談させていただきたいことがあります。私には中学2年生の息子がおります。彼は、自分に関係のないことで怒りを覚えては、自分で自分の気持ちをざわつかせてしまうことがたびたびあり、考え方の転換やアンガーマネジメントの方法などアドバイスしてみても、自分は悪くないというスタンスで受け入れようとしません。
具体例を申し上げますと、彼の通う私立中学校では今、女子にもパンツスタイルの制服を認めるべく、学校と生徒で話し合いがされているようなのですが、彼は、「女子だけが選択肢が増えるのはズルい、腹が立つ」という理由で反対なのだそうです。「選択肢の問題なら、この機会に男子もスカートや、他に自分が着たいものを着られるよう提案してみたら?」とか、「どうしてもスカートをはきたくない女子がつらい思いをしているのを助けることはズルいことなのかな?」など話をしてみましたが、理屈ではなく、気持ちか収まらないのだと言います。
この他にも、自分には全く影響のないことで、いちいち気持ちを害しているようです。中学生にもなって自分の気持ちをコントロールできないのは、何か精神的な疾患でもあるのかと心配になります。私には男子中学生の気持ちは分かりませんが、主人が自分の中学生の頃を思い返しても、こんなに自分に影響ないことを長々考えたりいらついたりはしなかったとのことでした。
最近ではしゅうとにも指摘されてしまい、「母親がバリバリ働いているから子供に構う時間が少なくて子供がおかしくなった」と嫌みを言われてムカつく一方で、本当に私のせいなのかもしれないと落ち込んでおります。自分に影響のないことで腹を立てていては、今後社会に出たらメンタルをこじらせるか、面倒臭い人材になるだろうと思ってしまいます。本人もしんどいだろうと思います。
何とか自分の気持ちに折り合いをつける力を身に付けさせたいと試行錯誤していますが、反抗期でもあり、話は聞いてくれるもののなかなか受け入れ難いようです。たくさんの人材を育てて来られた上田さんのご経験からアドバイスいただけますと幸甚です。
(45歳 女性 会社員)
大竹剛(日経ビジネス編集):今年1月にお悩みを取り上げた女性からのお礼と、追加の相談です。時間をかけての独立を決意されたようです。よかったですね。
上田準二:優秀な方とお見受けしたから、独立はきっとうまくいくと思いますよ。応援します。
大竹:そこで、追加の相談なのですが、バリバリとキャリアを築こうと頑張ってきたことが、息子さんの教育に影響してしまったのではないかと悩んでいます。中学2年生の息子さんが自分の感情をコントロールできない様子を心配しています。これは、中学生男子の反抗期の特徴のような気もしますが、ちなみに、上田さんにも反抗期ってありましたか。
上田:反抗期というのは、大なり小なり誰にでもありますよ。特に男の子はね。女の子だって反抗期はあるでしょうけど、男の子は表面に出るパフォーマンスが激しい。大竹さんだって反抗期はあったはずだ。
子供は反抗期を経て成長する
大竹:きっと、反抗期はあったのだと思います。自分ではあまり意識していなかったし、これといった記憶もありませんが、きっと、親にしてみたら面倒臭いところもあったでしょうね。今度、聞いてみます。
上田:この方の旦那さんも反抗期はあったでしょう。誰にでもあったはずよ。旦那さんだって、家庭内で反抗的な態度を頻繁に目立つ形で出していなかっただけで、何らかの局面で必ず“反抗”はしているものです。
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
この息子さんは、お母さんの前で反抗的な態度がはっきりと出る。ただし、それは暴力という形ではなくて、理屈の面でね。反抗期というのは、自分がすべて正しくて、自分中心に物事を考えがちです。太陽が地球を回る、天動説という感覚ですね。
ですから、自分と異なる意見や感性、感覚を持つ人に対して、取りあえず反論してみたくなるんです。それは、成長過程で必ず現れるものだと思いますよ。
それが、お母さんに一番激しく表れているということだと思うんです。恐らく外では、ストレートに反抗的な態度を出していないのではないかな。
女子生徒にパンツの制服を認めようという運動に対して反抗する。いいじゃないですか。穏やかな反抗ですよ。「選択肢が増えるのはズルい」というのが反対の理由のようですが、明確な理屈じゃないですよね。条件反射的に反対しているようなものです。とにかく、反対意見を言ってみたいんです。
そういう行動を積み重ねるうちに、自分と向き合い、自分を取り巻く社会と向き合い、物事をしっかり考えるようになって本当の理屈を学んでいくんです。
逆に、僕は家の中では反抗することは抑えて育ったかな。
大竹:親に対しては反抗しなかった?
上田:家では抑えていましたよ。でも、外では反抗期だから、やはり友達と何かを話していても、「違うだろう」とか反対してみたり、先生が何か言っても、「違うだろう」って手を挙げてみたりね。もちろん、数学だったら答えは決まっているからそうはいかないけれど、文系の教科などでは先生に反抗していた時期があったなぁ。よくよく考えたら、明らかに先生の方が正しくて、自分の方が間違っていても、「それでも違う」と言い張ってみたりね(笑)。誰にでも、そういう経験はあるんですよ。
ですから、あまり深く息子さんのことで悩まずに、「この子は今、自我確立のために自分対社会の“理屈競争”を繰り広げているんだ」と思って、見守ってください。今は、太陽の周りを地球が回っていることを認めたくない。だけど、その理屈競争していく過程で、息子さんは成長していくよ。もしかしたら、息子さんは理論家になるかもしれない。整然とした理論が言えるようになるためのトレーニング、成長過程なんです。
それにね、あなたは息子さんにいい意見を言って、とてもうまく接していると思いますよ。
反抗期に心配は無用
大竹:どのあたりですか。「自分が着たいものを提案してみたら」とか?
上田:そうです。柔らかく、対話には応じてあげていますよね。息子さんの態度を批判するのではなく、子供が自分で気付くようにさりげない言い回しを使っている。お母さん、ウイットに富んでいるじゃない。その程度でいいんですよ。黙って無視すると、余計に子供は反抗するから。
大竹:中学2年生の頃の男子は、誰もこんな感じだと。
上田:そう。だから、心配ご無用。心配して腫れ物に触るような対応をすると、余計この子は反抗期から抜け出せなくなりますよ。
自分に関係のないことに腹を立てているというのは、自分に関係のないことにも関心を持っていると思えば、良いことですよ。息子さんは今、理論闘争のエクササイズの過程で、それがちょうど反抗期と重なっているんです。ご主人にも、そんな時期はあったはずです。僕は断言できるね。
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*この連載は毎週水曜日掲載です
本連載「お悩み相談~上田準二の“元気”のレシピ」が本になりました! 反響の大きかった話を中心に、上田さんのアドバイスをぎゅぎゅっと編集して詰め込みました。その数、全35個。どれも読むだけで元気になれるアドバイスばかり。上田さんの“愛”がたっぷりのお悩み相談本となっています。ぜひお手にとってみてください。
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