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上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、超大手企業から転職してきた上司の愚痴に悩まされている女性から。古い体質の会社にイライラが募るのか、毎日のように愚痴を吐き捨てる上司に対し、精神的に参ってしまっています。上田さんは「嘘でもいいのから『聞いてあげる』というふりをしよう。そうすれば心が大きくなる」とアドバイスします。

悩み:超大手企業から転職してきた上司の愚痴に悩んでいます。思い通りにならない会社に対するイライラした気持ちを毎日のように吐き捨てます。私は精神的に参ってしまいました。どうしたらいいでしょうか。

 そこそこの大手企業で働いています。他業界の超大手企業からマネジメント職として転職してきた方が、昨年から直属の上司になりました。グローバル企業だった前職と比較して今の会社に失望することが多いらしく、「前の会社では……」が口癖で、昭和的な社風や社員の英語力の低さ、近年の社会的な要請に対する意識の低さなどに対し、常に憤っています。

 会社の生き残りをかけて経営者視点で改革を進めようとする、上司の大方針と理想は理解できます。また、私自身も他業界からの転職組なので気持ちは分かりますし、素晴らしいキャリアを持つ方の下で鍛えてもらえることをうれしく感じていました。しかし、最近はあまりの要求の高さと感情的な言動に、疲れてしまいました。

 名前も呼ばずに突然、自席から早口で指示を出す。「本当にこの会社なんなの、気が狂いそう」などと毎日吐き捨てるように独り言を言う……など、上司は頭の回転が良いからこそ、部下をはじめ会社全体が自分の思い通りにならないことにイライラされているのだと思います。

 もともと少人数のチームだったのですが、先輩たちが昨年退職。私は他のチームのサポートを受けながら、なんとか辞めた人の分までカバーしてきました。うつ病と診断され、診断書も出されているものの、現在は会社に隠して通院しながら働いています。

 ようやく人員が補充されるようですが、その方も私より年上で華々しいキャリアをお持ちとのことなので、今後も雑務で手を動かすのは恐らく私のままです。このまま隠して頑張るべきか、迷惑をかけても会社に休職を相談すべきか相談させてください。

(34歳 女性 会社員)

上田準二:なるほど。ものすごく転職してくる人が多い会社なんだね。

大竹剛(日経ビジネス編集):そうですね。昭和的な会社で、そこそこの大手企業だとか。

上田:次に来る人も他の会社からで、華々しいキャリアの方が来るとか。

 だけど、どうだろう。いろいろなキャリアを持っている方が転職して来るけれど、この方々はあなたよりも実務を知らないんだよね。

大竹:この会社の実務という面ではそうだと思います。

上田:あなたのほうが現場の実務を一番よく知っているが故に、逆に言えば転職して来る方は自分のキャリアを誇示しようとしているのではないかな。「自分は能力があるんだ」「いいキャリアを積んできたんだ」という意識があるから、それをあなたに向かってつい、いろいろな愚痴として言ってしまうのでしょう。結果的に、それは自分の能力をひけらかしていることと変わりはないのだけど。それを朝から晩まで聞かされているあなたは、精神的につらくなるというのは、その通りだと思う。

 所詮、転職してきた上司は、あなたに愚痴を言うしかはけ口がないわけですよ。まずは、そういう関係になっていることを前提として理解しましょう。その上で、あなたは聞いてあげる。

大竹:聞いてあげる?

上田:「そうですか」「そうですか」と。ただ、あまりしらじらしく「そうですか」と言っちゃいけない。「へえ」と納得したような表情で、「ああ、そうですか。それは大変ですね」「うちの会社はそういうところはないのかもしれませんね。だけど一緒に少しでもよくしていきたいと思います」といった具合に。ただし、ここで大切なのは、話をまともに受け取らないこと。

大竹:まともに受け取らないというのは、つまり、聞き流す、ということですか。

上田:ようするに、「聞いてあげている」というパフォーマンスをするんです。その人と同じ気持ちにならなきゃいけないと思う必要は全くありません。上司の言葉を全て受け止めていたら疲れてしまうよ。ただでさえ、上司は強い立場にいるんだから。