上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、仕事中に「能力がないなら死ね」という声が聞こえてくるという40代の女性から。無意識に自分を追い込むためにしてきた習慣が抜けなくなったのではないかと悩んでいます。上田さんは「悪い夢は自分で前向きな方向に変えられる」とアドバイスします。

悩み:仕事中、どこからか「能力がないなら死ね」というような声が聞こえてきます。そろそろ限界です。どうしたらいいでしょうか。

 仕事中、どこからか「能力がないなら死ね」というような声が聞こえてきます。鬱(うつ)ではないです。幻聴でもないです。ただそんな気がするだけです。過去、親や上司からそんなことを言われた記憶もなく、おそらく自分自身を追い込むために始めた何気ない習慣が抜けないのではないかと思っています。そろそろ限界です。どうしたらいいでしょうか。

(43歳 女性 会社員)

上田準二:まず第1に、軽度の鬱病が始まっている可能性があるので、注意した方がいいと思いますよ。一度、心療内科に行って専門の先生に相談すべきだと思います。「大丈夫だ」と思っている間に、どんどん深刻になっては困るから。今のうちに一度、診てもらうのが大切だと思う。

 一方で、「能力がないなら死ね」というような声に対しては、あなた自身が「自分は会社にとって必要な人間なんだ」と、もっと大きな声で言い返してください。「会社から与えられたミッションは、きっちりまじめにこなしている」と、自信を持ってください。そういうふうに、自分自身に毎日言い聞かせてみましょう。

 「私はやることはやっている」「与えられたことはきっちりこなしている」と考えるのです。「能力」というと、何かものすごく大きなことをなし遂げなければいけないと思いがちだけど、そうじゃなくていいんですよ。会社から与えられた仕事にまじめに取り組むことだって、立派な能力です。自分としては一生懸命やっている。それで十分です。

 だから毎日、朝、出掛ける前、そして仕事が終わったら、「今日の仕事はきっちりと消化した」と自分に言い聞かせて、「自分は会社にとって必要な人間だ」と唱えましょう。

 「能力がないなら死ね」という声が聞こえてこなくなるまで、とにかく唱える。

大竹剛(日経ビジネス編集部):上田さんがいつも話していることですが、「自分に言い聞かせる」ということは本当に大事ですよね。

上田:そう、何事も自分自身に言い聞かせる。

大竹:「元気、勇気、夢」だ。

上田:そう、僕がいつも言っている「元気、勇気、夢」と同じことです。

 1回ぐらい唱えただけでは「元気、勇気、夢」が出るかいうと、そうはならないよ。とにかく、毎日唱え続ける。今回の悩みも同じ。今日「自分は会社にとって必要な人間だ。能力はあるんだ」と唱えたからといって、明日に自分は能力がある人間だと思い込めるかといったら、そんなことはない。1日や2日、唱えたくらいではなかなか難しい。だから、「能力がないなら死ね」という声が聞こえてこなくなるまで、毎朝、毎夕、唱えてみてください。

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