上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、上級職への昇進の打診を受けたという40代の女性から。ロールモデルがいなくて、どのようにそのポジションに見合った役割を勉強したらよいのか、悩んでいます。上田さんは、「そもそも、ロールモデルなんていらない」とアドバイスします。
悩み:先日、上級職へ昇進の打診がありましたが、自信がありません。ロールモデルもおらず、どのように勉強したらいいのかも分かりません。どうしたらいいでしょうか。
上田様、大竹様。直近のパワハラ通報の話は、私自身がパワハラ通報を受ける立場にあるコンプライアンス担当者として、非常に興味深く読ませていただきました。同じ人が何度も通報されることは結構あります。組織が小さいと、通報されても加害者を異動させることが難しく、注意しても状況が改善しなかったり、通報者にも問題があったりする場合もあり、職場の雰囲気が変わらないということはよくあります。通報者は部分最適を求める傾向がある一方、相談窓口は全体最適を目指しているので、なかなか解決が難しいです。
また、以前は相談に乗っていただき、ありがとうございました。あれから、精神的にも落ち着き、ネットに他人を中傷するコメントをすることはやめました。
さて、改めて相談があります。年初に当たり、自分のキャリアについて考えました。身近にロールモデルがいなくて、それでも何とかやってきて、先日、上級職への打診をいただきました。漠然と自分には不釣り合いのように思います。でも何が足りないのか分からないので、足りないものを勉強しようがありません。
女性の役職者の知り合いも多いのですが、彼女らのように聡明(そうめい)でも真面目でもない私が、どのように立ち回ればいいのか、さっぱり分かりません。体力的にも自信がありません。また、上級職になると、自分の専門性を離れないといけません(今の専門分野では上級のポジションがないため)。これもつらいです。仕事の範囲が広がるのはうれしいのですが、どうしたらいいのでしょうか。
それでも成果を作り進んでいくほか仕方がないのでしょうが、どのようにがんばればいいのか。方向性を決めるやり方を教えていただきたいと思い、相談させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
(43歳、女性、会社員)
大竹剛(日経ビジネス編集):「直近のパワハラ通報の話」というのは、あの「リンリン」の相談ですね。
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上田準二:よかったね。参考になって。
大竹:この方はコンプライアンス担当をしているということで、社内からのパワハラの相談が寄せられているのでしょう。
上田:パワハラの件は、どの会社でもあなたが言うような悩みを抱えていますよ。パワハラしている当事者に厳重注意をしたり異動させたりしても、状況があまり改善しなかったり、調べてみたら通報者側にもいろいろな問題があったり。「一発で解決」なんていうことは、なかなか難しい。だから、あなたは一発で解決なんかは目指す必要はなくて、それなりに対応していると、自分自身で納得してください。そう思うしかありません。
大竹:実はこの方、以前も相談を寄せてくださっています。覚えていますか。コンプライアンス担当なのに、ネットで他人を誹謗(ひぼう)中傷する書き込みをしたいという衝動にかられてしまう、というものでした。
結局、上田さんのアドバイスで誹謗中傷はやめたようです。
上田:それはよかった。他人を誹謗中傷しても、いいことは何もない。
大竹:それで今回の相談ですが、一言でいうと、上級職に昇進する打診を受けたのだが、「ロールモデルがいない」から不安だということのようです。
上田:まず、あなたはこれまでもロールモデルがいなくてやってきたわけですよね。だから、これからもやれます。
「上級職へ打診いただきました」ということですが、昇進に当たってはそもそも、ロールモデルなんかありません。どういう上級者になるかは、あなた自身が決めることです。
例えばサラリーマン社会においてよくいわれることですが、人が役職をつくるのではなくて、役職が人をつくるのです。同じ能力、あるいは自分より優れた能力のある人がほかにいたとしても、自分が先に上級職に就くことはあります。そうすると、ロールモデルなどなくても「上級職としての責務は何なのか」ということを自分自身で考えて仕事をしていけば、おのずとそのポジションに見合った責務を果たせるようになる。自分自身がロールモデルなんですよ。
課長になったら課長としての、部長になったら部長としてのスキルを自分自身で身に付けていくんです。こういったスキルは、勉強しても身に付けられるものではありません。
大竹:何かテキストを見て学べるようなスキルではないということですね。
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