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上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、人事制度の設計を担当する男性から。これまで、年功序列、終身雇用からの脱却を進めてきたのに、ここにきて社長の方針で「年齢給」が導入され、どうしても納得できません。上田さんは、「組織で働くとは、そういうこと」と励まします。

悩み:これまで、年功序列や終身雇用的な賃金制度からの脱却を進めてきましたが、ここにきて社長の方針で年齢給という時代に逆行する仕組みが導入されてしまいました。 人事制度の設計を担当してきた者として納得できません。自分の主張はどこまで押し通すべきでしょうか。

 社長特命で、人事制度の設計をしています。進め方は、私が考えた内容を都度、社長に説明し、その結果を各部門長で構成されるワーキンググループ(WG)にかけて、意見を収集する、というやり方です。

 ところが賃金テーブル設計の段階で、社長が唐突に年齢給の導入をWGで言い出しました。もともと賃金テーブルの構造は私が設計し、中身の金額は社長が決めるように依頼していたのですが、その金額を決める際に「年齢給」という概念を思い付いたようです。

 しかし、年功序列や終身雇用的な賃金制度からの脱却はこれまでの会社の方針で、その方針でこれまでうまくやってきていました。現行の制度を導入した当時は経営が苦しかったこともありますが、退職金の積み立てを清算し、今頑張っている人に厚く還元してやれ、ということで今に至ります。今回、私が設計して提案した新たな賃金テーブルも、より実力がある若手に報いようというものでした。

 私の考えは、昨今のご時世に照らし合わせても間違っていないと思われるため、それに逆行する年齢給の導入は反対と、そのWGで主張しました。ところが、別の部長が「分かりやすい」と主張し始め、なんとなくWGで年齢給の導入が決まってしまいました。

 私は、いまだに納得していませんし、年齢給の導入は間違っている、と思っているのですが、このような会社の雰囲気の中で、自分の主張をどこまで押し通すか、悩んでいます。

(48歳 男性 会社員)

大竹剛(日経ビジネス):先月、日経ビジネスは「トヨタも悩む 新50代問題 もうリストラでは解決できない」という特集で、年功序列や終身雇用に象徴される「日本型雇用」が限界に来ているという話を取り上げました。今回の相談は、それに逆行するような内容です。

上田準二:制度変更に関しては、どんな場合でもいろいろな意見が出るものです。今は人手不足で、例えばITのエンジニアなどに対しては大手でも高い給料を提示して採用に力を入れているから、若い人、実力のある人に手厚く配分できるような仕組みにしないと、人を採れないのかもしれない。

大竹:そうですね。取材でもそういう話はよく聞きます。大企業がそのように動いているから、中小企業では年功序列なんて言っていられなくて、実力主義にしないと大企業に対してますます採用で負けてしまうと。

上田:そうでしょう。僕の息子はシステムエンジニアだから、そういう話はよく聞くよ。息子にこう言ったことがあるんだ。システムエンジニアの需要はものすごく大きいから、今の会社で給料が上がらないのなら、もっと報酬を払ってくれるところにいつでも転職できるようにしておけとね。

 年功的な給与制度があって、長く勤めていけばどんどん給料が上がるというのであれば考えてもいいけど、そうじゃないだろうと。しかも、大手からのアウトソーシングでシステムの開発を受託しているような中小企業なら、能力給といっても払える給料に限界はあるでしょう。

 それはシステムエンジニアだけではなくて、専門的なスキルを持った人の採用では、こうした状況は広がってきているでしょう。相談をしてくれたこの男性の会社に照らし合わせたらどうなのか。この会社の規模はどれくらいか分かる?

大竹:相談の投稿時に聞いているアンケートによると、100人未満の会社のようです。