苦手な相手でも「理解」してあげる心のゆとり

大竹 剛(日経ビジネス):「信用できないわぁ」とか。気を使って周囲のことをよく見ている方だからこそ、そんな発言がつい、出てしまうということですか。

上田:そう。だけど、彼女は上司を通じて謝ったわけでしょう。そういう行動からも、意図してあなたに対して心のダメージを与えようとしているわけではないはずです。瞬間的に思ったことを言ってしまうだけ。

大竹:なるほどね。

上田:だから、そういう人だと、彼女のことを理解してあげてください。嫌いだ、やりづらい、と思うのではなくて、彼女のいいところを理解してあげましょう。悪意はないはずです。

 相手がミスをしたときとか、意見が対立したときに、つい、言葉が攻撃的になってしまう。だけど、本人はそれを根に持ってない。そういうタイプだと理解しましょう。

 この方は、自分の発言があなたにストレスを与えているなんて思ってないので、それをあなたがストレスと感じてしまうのは損じゃない。そういう人だと理解して、その上でどのようにコミュニケーションを取るのかを考えることが、組織の中では大切なんです。

大竹:広い心を持っていないと、なかなか大変そうです。どんな感じでコミュニケーションを取ればいいのでしょうか。

上田:僕だったら、「上田、そんなだったらお前、昇任できないぞ」と上司に言われたら、「困ります! どうしてですか? 教えてください」とその上司にすり寄るな。

大竹:「駄目だ」と言われたら、「どうしてですか?」と聞いてみる。

上田:そう。でも、その聞き方はケンカ腰ではないよ。あくまでも、「え~! そうなんですか? おかしいなぁ。僕はバカだからよく分からないので、もうちょっと分かりやすく教えてください!」なんて、ちょっと甘える感じで聞いてみるんだよ。

 そうすると相手は調子に乗るから(笑)。「おぉ、そうか? よく聞いておけ。昇任試験というのは、ここのところが問題だから、上田はそこを直さないといかん」とか言ってくる。

 その答えは、既に分かっていたことかもしれないし、そうではない新しい気付きを与えてくれるものかもしれない。いいアドバイスだったら聞けばいいし、そうでなければ聞かなければいい。いずれにしても、「教えてください」と言ったって、何も損にはならないんだよ。であれば、聞いてみればいいじゃない? そうすれば、相手とうまくコミュニケーションを取れると同時に、アドバイスを活用できるかもしれない。一石二鳥だ。

 「昇任できないわよ」と言われて重く受け止めるのではなくて、「いやあ、それは困っちゃいますね。どうしたらいいんですか」と聞き返せるくらいの心のゆとりを持ちたいものだね。面倒な相手の発言こそ、ゆとりを持って受け止めてあげられるようになったら、もう何も怖くないよ。相手のコミュニケーションのやり方が変わることなど期待せず、自分のコミュニケーション力を引き上げるんです。ただ、相手の言葉を受け止めてあげればいいんですから、それほど難しいことではないよ。

大竹:苦手な相手の発言を受け止められるように、自分のコミュニケーションの幅を広げることは、トレーニングすればできるものですか。

上田:できる。相手の発言を受けて、あなたが何か行動に移さなければならないというわけではありません。ただ、相手の言葉を受け止めてあげるんです。

大竹:行動するのではなく、ただ、受け止める。どういうことでしょうか。

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