「ゴマすり」には「直ゴマ」「間ゴマ」「逆ゴマ」がある
大竹:本心でそう思っていなくても、反射神経でそういうように打ち返すんですね(笑)。でも、そんなことをやると、今度は周りの後輩から、「何だ、上田さんは部長にへいこら、へいこらして、二枚舌使って信用ならん」と言われませんか。
上田:大竹さん、「ゴマすり」には3種類あるのを知っていますか?
大竹:いや、知りません。何ですか? ゴマすり3種?
上田:「直ゴマ(じきごま)」「間ゴマ(かんごま)」「逆ゴマ(ぎゃくごま)」です。
大竹:すみません。初耳です。
上田:直接ゴマをするのが「直ゴマ」。間接的にゴマをするのが「間ゴマ」。それから、相手を怒らせてゴマをするのが「逆ゴマ」です。
大竹:まず、「直ゴマ」とはどんなものですか。
上田:「いやあ、もう部長のおっしゃる通りです」(上田)
「上田、何か言いたいことないのか」(部長)
「いえいえ。私の言いたいことは部長が既におっしゃいました。もうそれ以上のお話はありませんよ。部長はもう全部見ていらっしゃいますから」(上田)
これが「直ゴマ」。いわゆる、最もオーソドックスなタイプのゴマのすり方です。
ただし、これで効果がないタイプの上司もいる。「あの野郎、信用ならんな」と逆に思われてしまう。だからこそ、相手のタイプを見て「ゴマすり3種」を使い分ける必要がある。
僕はどちらかというと「間ゴマ」をよく使っていたな。
大竹:では、「間ゴマ」の実演をお願いします。
上田:「部長、もうおっしゃる通りです」(上田)
「お前なんかもう最低だ。何をやらせても出来が悪いな。お前なんかにはもう、こんな仕事は回せない」(部長)
「申し訳ありません」(上田)
と、ここはいったん、引き下がる。「おっしゃる通りです」と「直ゴマ」でいこうとしても、相手が取り付く島なく怒っているときにどうするか。こちらも、せっかく直ゴマをしようとしているのに取り付く島がないから、ムッとしてくる。
それを続けていても仕方がないので、いったん引き下がるんです。で、その日のうちか、遅くとも数日以内に、同僚と飲みに行くんですよ。
大竹:怒っていた部長の同僚ですか?
上田:いや、自分の同僚たちと。そこで、神妙な顔をしてこんな話をするんです。
「あの部長、すごいよね。もう、全部お見通しだもん。あの人はやっぱり、すごい知識と見通す力を持っている。俺はもうこれで怒られるのは2回目だけど、3度、あの部長から言われないように、よほど慎重に仕事をしないといけない……」
面白いものでね。そういう噂は、不思議と広まるものなんだよ。「上田が部長のことを、こう言っていましたよ」とね。
その効果は、もうてきめん(笑)。後日、部長から声がかかる。「上田君、ちょっと飲みに行こうか」ってね。そして、「君に今度、この仕事をやってもらおうと思う」なんて言ってくるんだ。「もうお前なんかにやらせられない」と言っていたのに。
大竹:面白いですね。上田さんが話していたことを部長に陰で伝えそうな相手を選んで飲みに行くんですか。
上田:もちろん。これが「間ゴマ」。
それと、「間ゴマ」にはもう1つ手がある。
大竹:何ですか?
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