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「謝罪」では、相手を褒めろ

上田:そう。ただし、手紙を書くときのポイントがある。

大竹:なんでしょうか。

上田:社長を褒めたたえること。

 「この間の一件では、私の知識と判断力の稚拙さにより、社長に大変不快な思いをおかけし、お怒りを頂戴しました。身に染みて深く反省する状況にあります。社長のお言葉は本当に身に染みました。」

大竹:もう、そのままコピペして出せそうです(笑)。

上田:社長がこの相談室でのやりとりを読んでいたら、逆効果かもしれないけどね。

 ポイントは、「社長はすごい」「感服しました」という感じの手紙を書くことです。組織の中で生きていくためには、時にはこういうことをできるようにならないといけません。

大竹:プライドや見栄は邪魔だと。

上田:パスカル先生も言っています。「人間は自然の中で一番弱い葦(あし)のひと茎。しかし、考える葦だ」と。パーッと風が吹くとやられてしまうが、だけど折れない。またすっと立つ。

 あなたもちゃんと考えないと折れちゃうよ。だから、考えなさい。

大竹:この方は就職してからずっと、知財という専門性の高いお仕事をしてきましたから、そのプライドもあってガツンと社長に反論してしまったのかもしれませんね。

上田:自分の理論を通すことが会社のためであったとしても、相手は社長。通し方を考えないといけない。合理的な意見であっても、素直に受け入れられないという社長も多いからね。だいたい社長というのは、知らず知らずのうちに高圧的になるものなんだよ。「何でもフランクに議論しましょう」という趣旨の会だったとしても、「おい君、意見を言え」みたいに命令口調になる。そんなことをしたら、誰も本音を言わないのにね。

 ある意味、本音でぶつかることができたあなたは素晴らしいですよ。けれど残念なことに、この社長はそれを素直に受け入れられないのかもしれない。きっと、それまでそういう人物はこの会社にはいなかったのだろうね。

 だからまず、この問題を解決するには、あなたから直接、社長に手紙を出すことです。自分が言ったことが間違っていた、社長は素晴らしいと、とりあえず謝る。あなたの本心はどうであれ、まず謝る。

 すると、不思議なことに、そういう社長というのは、謝られると気持ちが落ち着いて、「彼女が言ったことも本当は正しいんだよな」という気持ちになるものです。

 「いやあ、上田さん。この間、上田さんにバシッと怒ってもらって、効きました。本当に浅はかでした」と言われると、「あの野郎」と怒ったことも忘れて、「あいつの言うことは一理あって痛いところを突かれたから頭に来たんだよな」と反省するわけです。

大竹:なるほど。一理あったからこそ、社長は怒った。やはり、その辺をうまく、柔軟に謝れるようにならないと、組織の中ではうまく生きていけませんか。

上田:「謝る」という技術は、自分が悪いときだけではなく、相手を褒めるときにも使えるんだよ。

 僕はそうやってきたよ(笑)。

 例えば、部長から部下がたくさんいる前で、「上田、お前、仕事をなめているのか」とすごい迫力で怒られたとするでしょう。それをそのままで終わらせてしまうと、「上田にはもう、あの仕事をさせるな、お客様に会わせるな」となってしまいかねない。だから、即座に「いや部長、おっしゃる通りです。本当に、私の不徳の致すところです。申し訳ありません。部長はいつも、先のこと、細かいところまで目配りが行き届いていて、素晴らしいです。私なんぞは、とてもとても……。お叱りを頂いて目が覚めました!」とでも言っておくんです。