全3691文字

サラリーマンの「専門性」は自分では決められない

上田:そうだよ。電気系のエンジニアが電気系一筋でやっていくことだけがキャリアアップではありません。エレクトロニクスの分野を突き詰めることがキャリアアップなのか。はたまた、管理部門でずっと管理部門の仕事を突き詰めることがキャリアアップなのか。少なくともスキルアップにはなるけれど、必ずしもキャリアアップになるとは限りません。専門職として経験も知識も豊富に積んでスキルアップしていくことが、キャリアアップになるのかというと、僕は違うような気がするんだよね。

 エンジニアが自分の専門領域ではない分野を担当することは、違った視点で仕事をしていく力をつけることにもなるでしょう。それが、キャリアアップということなのではないかな。そういった意味で、君は僕の後輩だから、どんどん自分の専門分野外でも与えられたものはチャンスだと思って取り組んでみてください。

大竹:会社の人事はいろいろな要素が組み合わさって決まるものですよね。専門性を磨きたいという思いがあっても、磨いたところでその会社で生かせないかもしれないし、逆に何かの縁で全く専門とは関係のないところに異動して、これまでとは違う才能が花開くかもしれないし。

上田:会社によっては、総合職と専門職に採用が分かれているところもあるでしょう。総合職はオールラウンド。専門職はその道一筋。多くの場合、専門職ではあるポジションまでいくと、その先の昇進はなくなっていくんですよ。専門職は、マネジメントをしませんからマネジメントのポジション、つまり部署を束ねるような立場になることはないんですよね。

 一方、総合職は営業をやったり管理をやったり、あるいは開発をやったり、企画をやったり、いろいろな部署でいろいろな仕事をする。だからこその「総合」職なんです。そのような場合は、自分の専門を自分では決められません。厳しいようだけど、多くの場合、会社に決められるんです。

大竹:なるほど、「総合職」として採用されている限り、サラリーマンの”専門性”は自分ではなくて会社の都合で決められる。

上田:会社という組織に属する限り、会社全体にとって必要なポジションに、その時々で異動させられる。それが嫌ならば、独立するか、自分が望む専門性を生かせる会社に転職するしかありません。だから僕の後輩よ、君は大学で学んだ専門とは違ったところで仕事をすることも、1つのチャンスと思ってやってみてください。

大竹:「場当たり的な人事」に巻き込まれてしまったと感じているようです。「他部署の同期が着実に専攻を生かし、キャリアを積み上げている様子を見ると、不安な気持ちが込み上げてきます」と書いています。不安な気持ちは分かりますよね。

上田:まだ入社4年目でしょう。不安になる必要はないよ。「自分はこれが専門だ」なんて決めずに、新たな専門分野を獲得するくらいの気持ちで仕事に取り組んでください。