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上田準二さんの「お悩み相談」。今回は親会社から子会社に出向中の55歳男性から。親会社の利益に貢献しようすると子会社の利益を損ねることになり、子会社で評価されずに悩んでいます。上田さんは「親会社のために子会社を搾取するような発想を改めろ」とアドバイスします。

悩み:親会社から子会社に出向しているのですが、親会社の利益を優先すると子会社の利益を損ねることになってしまいます。親会社と子会社の板挟みで、モチベーションが上がりません。どうしたらいいでしょうか。

 東証1部上場の流通企業に勤めており、今はその子会社に出向しております。その出向先で親会社の利益と、子会社の利益の板挟みになっております。

 私が今の仕事で一生懸命に頑張って、親会社のために改善提案やコスト削減をすればするほど、今いる子会社の利益を損ねる結果になります。「ほどほどにやれば?」という人もいますが、やはり親会社のことを考えると色々と提案をしてしまいます。

 しかし、そうすればするだけ子会社の利益が減り、子会社でいい評価をいただけません。子会社の利益も減らさず親会社の利益が上がるようなことを考えればよいのでしょうが、そう都合よくいくものでもありません。そんなこんなで、私自身も全くモチベーションが上がりません。

(55歳 男性 会社員)

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

大竹剛(日経ビジネス):今回は、流通業にお勤めの55歳男性からです。上田さんがお詳しい分野かもしれませんね。この方は親会社から子会社に出向していて、親会社のために仕事をしようとして頑張ると子会社での評価を得られない、といった悩みを抱えているようです。子会社の社員から見れば、親会社の方向ばかり向いている出向社員というのは、感じの良いものではないでしょうね。

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス元相談役):僕は伊藤忠商事の子会社、あるいはグループ会社に何度も行っているんですよ。社長として行ったのはファミリーマートだけで、それ以外は経営の管理職としての出向でした。おそらく、この55歳の男性と似たような立場だったと思います。

 子会社やグループ会社に出ていくたびに、私自身が肝に銘じていたのは、この会社が今以上に利益を上げて、その先はさらに大きな売り上げと利益を出せるようにしようということでした。それは、社員に対しても同じように言っていたよ。社長としてではなく出向として行ったのは赤字の会社がほとんどだったから、まずは黒字化を目指そうとね。

 そのためには親会社との取引においては、同業他社よりも有利な条件を絶対に引き出すと宣言しました。原材料が安いとか、物流コストが安いとか、そういった有利な条件を親会社から引き出すぞと。そして、この会社の利益が上がって、売り上げ規模も大きくなることで、結果的に親会社にその利益が還元されて、子会社との取引も大きくなる。つまりは、連結利益が増えるというわけだ。

 これは親会社に対しても、出ていった子会社に対しても言ったことです。親会社のためになんていうことを、出向社員が考える必要は全くありません。むしろ、逆にそんなことをしてはいけません。