上田準二さんの「お悩み相談」。今回は42歳の女性会社員から。部署を異動して3年目、仕事をほとんど与えられず、しかも失敗ばかり執拗に叱責され、ストレスが限界に達しています。しかし、理由が定かではありません。深刻な相談に上田さんは「健康なうちに決断を」と助言します。
悩み:異動して3年目になりますが、干されています。ほとんど仕事を与えられず、何か失敗すると執拗に責められ、ストレスも限界です。どうしたらよいでしょうか。
いつも楽しみに拝見しております。メーカーに勤める一般社員です。現在の部署は購買で、3年目(その前は経理部に10年在籍)です。今回ご相談させていただきたいのは、上司(課長職・女性・50歳近く)との関係についてです。
以前の部署にいたときは、この女性には仲良くしていただき、その縁があって現在の部署に異動してきました。しかし、3年たっても、新しい仕事をさせてもらえません。与えられている仕事の内容は、工場からの購買要請に対して納期の調整をするというもので、1カ月に1回の頻度しかありません。あまりにも時間を持て余し、他部署の手伝いをしてみたところ、部長を通じてやめるように促されました。それからというもの、私の行動は監視されるようになりました。
私としては新しい仕事をさせてもらえるように、部長や人事を通して訴えましたが、今も変化がありません。課長である女性は、私が失敗すると、それについて執拗にコメントしてくるので、私のストレスも限界状態で、頭痛など身体に影響が出ています。
最近も、この女性に仕事の説明などを求めましたが、仕事の失敗を指摘されただけでした。私としては何とか分かってほしいという気持ちもありましたが、その気持ちも踏みにじられた気持ちです。
転職も考えましたが、年齢や社会情勢を考えると、一歩踏み出せずにいます。これからどのように仕事をしていくべきか、上田さんから指針を頂ければ幸いです。
(42歳 女性 会社員)
大竹剛(日経ビジネス):「いつも楽しみに拝見しています」という42歳の女性からです。女性からの相談が、本当に多いですね。
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス元相談役):これの悩みは、僕も興味深く読みましたよ。10年在籍した経理部から異動して3年目にもなるのに、実質的に何ら仕事を与えられてないということですよね。深刻な悩みだな。
大竹:そうなんです。
上田:お茶を濁す程度で月1回、工場からの購買要請の納期の調整をしているだけで、暇でしょうがない。当たり前ですよね、月1回しか仕事がないんだから。
つまりこの方は、言葉は悪いかもしれないけれど、はっきり言えばこの部署で“飼い殺し”にされているんだよね。しかも、仕事が何もないからほかの部署の手伝いをしようとしたら、部長からも他の部署の手伝いをしてはいけないと言われている。部長だってこの女性課長だって、彼女には仕事が何もないことを分かっているのに。
この相談内容からだけだと、どのような事情で異動してきたのか、そしてなぜこのような扱いを受けているのか、とっても不可解だね。これは想像だけど、何らかの理由でこの部長、課長の下で、一般的に言う“預かり”になっているような感じがする。
周囲の対応に変化がなければ転職を考えるべきだ
大竹:何か、懲罰的な扱いなのでしょうか。
上田:それはよく分からないね。だけど、いずれにしても、あなたがこの部署に異動してきてから仕事を与えられていないというのは、この部署の方針だと理解する以外にないな。
もっと詳しく状況を聞かないと分からないけれども、今、あなたにできることは、もし、もう少しこの会社で働くことを考えているのなら、与えられた仕事をきっちりとミスなくこなすことしかない。仕事の分量も多くないわけだから、それをきっちりとこなすことにまず集中すること。それと、他部署の仕事に手を出すなというのがこの部署の方針のようだから、それはしないことです。
一方で、会社には笑顔で毎日出社しましょう。ストレスが限界に達しているということだから、そう言っても、なかなか難しいかもしれない。だけど、この会社にしばらくいようと思うのなら、今の部署の方針に従いつつ、わずかな仕事を完璧にこなして、笑顔で出社するしかありません。
そうすると上司はあなたに、新しい仕事を少しやってみてくれないかという話をしてくるかもしれない。表情も暗く、ジッと座っているだけでは、周囲は腫れ物に触るような対応をして、状況は一向によくならないと思う。
努めて笑顔でいてください。そうすると、課長か部長が、何かしらあなたに話をしてくるかもしれない。そのときには、きっちりと受け止めて、その仕事をやってみてください。
それでも全然変わらないのであれば、あなたに対する処遇は変えない、ということが会社の方針として決まっているのかもしれない。そのとき、転職を検討してみてください。
大竹:しかし、既に3年目ですよ。長すぎませんか。既に、笑顔でいるように努力したり、仕事を完璧にこなそうとしたり、色々と工夫してきたのではないでしょうか。
上田:普通、3年目にもなってまともな仕事をさせずに置いておくということは、あり得ないよね。だけど一方で、相談の内容からは、あなたのミスを課長が執拗に責めているということは、あなたを辞めさせようとしている雰囲気も伝わってくる。
大竹:このような扱いを受けているのなら、もう早く見切りをつけた方がいいのではないでしょうか。
上田:この相談は本当に深刻だよね。さっき話したような対応を改めてしてみても、周囲に変化が起きないのであれば、確かに、この会社の中には解決方法はないのかもしれない。まず、あなたは今、僕が言ったことを最低限やってみて、上司や同僚のあなたに対する接し方が変わるかどうか、見てみてください。もし、前向きな変化があるようであれば、この会社に残るという選択肢もあるでしょう。ただ、それがなかったら……。やはり、この会社を辞めて転職した方がいいと思う。
大竹:このような状況を我慢し続けていても、それこそストレスに押しつぶされて体を壊してしまいそうです。
上田:そうだね。心身共に壊れてしまったら、それこそ転職だっていい結果を残せないかもしれない。健康なうちに、まだこの会社に居続けるか、転職するか、決断をした方がいいですね。
読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
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*この連載は毎週水曜日掲載です。
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