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「感染しやすさ」はどうか

 では、この感染症の脅威はどれほどのものなのか。新しい病原体が地球を滅ぼす、といったパターンの映画がたまにありますが、新型コロナウイルス感染症はどうでしょうか。かかったら死んでしまうものなのでしょうか。

 ランセットの論文によれば、「新型コロナウイルス感染症にかかった患者41人のうち、15%が死亡した」とありました。えっ、結構高いじゃないか……と思ったのですが、この41人はもともと入院が必要なくらい重症だった患者さんたちです。ですから、この数字はうのみにできません。他の数字を見ると、世界保健機関(WHO)の1月23日付のリポートには死亡した人は感染者557人のうち17人、4%とあります。今後、軽症の感染者が増える(診断される人が増える)ことが予想されますから、比率としてはもっと下がるかもしれません。

 感染症の怖さを示す指標として、もう一つ、別のものがあります。それは、「感染しやすさ」を表す基本再生産数(R0、アールノートと読みます)というもので、1人の感染者から何人が感染するかを数値で示したものです。例えば、毎年流行する季節性インフルエンザは1.2~1.4で、高いものだとはしか(麻疹)が12~18です。今回の新型コロナウイルス感染症は、まだ確定していないとはいえ前出のWHOのリポートには1.4~2.5と記載されていますから、それほど感染しやすいものではないというイメージで良いと思います。

まとめると「状況はまだまだ流動的」

 これらの情報をまとめると、「世界中で死亡者が何万人と発生し大パニックになるような、とんでもない感染症ではないのではないか」というのが現在、中山の考えていることです。しかしもちろん急に世界中に感染が拡大し日本にも大量に感染者が発生すれば、予備力の少ない高齢者が多数死亡するということも考えられます。まだまだ流動的であり、見通しは立っていません。が、過度に恐れることはないと思います。今回はメディアの報道もそれほどあおりが多い印象はありませんね。

 また、私は日本にいる知人の中国人医師を通じて、武漢にいる医師の状況をインタビューしました。「必要な防護服や医療従事者向けマスクが不足しており困っている。しかし必要な物資は時間単位で変わっており、極めて流動的」とのことでした。知人の医師は武漢にはおりませんが、支援をしようにも難しいようでした。

 現在はまだ治療薬はないものの、「カレトラ」という薬を新型コロナウイルス感染症患者に使うという話があります。これはもともと抗エイズウイルス(HIV)感染症に使う薬で、その効果を検証するための臨床試験が早くもスタートしています(資料)。この規模の検証であれば、おそらく数カ月以内に結果が出ることでしょう。

 コロナウイルス全般について、確実な情報を知りたい方は、厚生労働省ホームページの「新型コロナウイルスに関するQ&A」をご参照ください。

 最後になりますが、日経ビジネス電子版の読者の皆様が報道をウオッチするに当たり、ポイントをお伝えしておきます。

①医療従事者(医師・看護師など)に感染があったか
 これは、医療従事者が感染するとそこから院内で他の患者に感染することが多いため、感染拡大のきっかけになるという意味で重要です。報道でも(あまり意味は理解されていなさそうですが)医療従事者の感染の有無についてはたまに触れられていますね。

②流行地域はどこか
 こちらも現段階では国内でまだ広がっていないため、感染患者が発生した地域にはまず近づかないという方法で感染が回避できる可能性が高まります。もっとも、一気に広まってしまったらあまり意味はありませんが。

 それでは皆様、また次回お会いしましょう。

※本記事は基本的に執筆時(20年1月28日)の情報を基にしており、今後感染の拡大に伴い危険性の評価などが大きく変わる可能性があります。