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 こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。新年も明けてしばらくたち、やっと私の業務は落ち着いてきました。落ち着いてきた、と申しますのは、年末年始は定時の手術が約1週間お休みになるため、年始には手術が立て込むのです。例年のことではありますが、1月はいつもより忙しい日々を過ごしておりました。

 思い返せば2019年末、私は30日と31日の緊急手術当番を担当しており、ほぼずっと緊急手術をしておりました。特に31日は夕方5時くらいまで手術をし、その後、紅白歌合戦を見ていたら年明け早々夜中に呼び出され、また手術……というあんばいでございました。外科医らしいのですが、まあそれは落ち着かない日々でした。

 緊急手術と一口に言ってもいろんなタイプがあり、消化器外科医の私が担当するのは「大急ぎで手術をしないと死亡する」病気が主です。腸がねじれて腐った「腸捻転による絞扼性(こうやくせい)イレウス」、穴にはまりこんで腐った「ヘルニア嵌頓(かんとん)」、腸に穴が開いた「腸穿孔(ちょうせんこう)」、胆のうに石が詰まって炎症が起きた「急性胆のう炎」、などの疾患ですね。

 あらゆる都合は問答無用で吹き飛ばされ、大急ぎで手術をするということになります。そういう職業なので当然ですが、こうした待機当番を何日も連続でやると、だんだん頭がおかしくなってくるような気がします。外科医が多少のことでは驚かないのは、こんな状態が長くて麻痺(まひ)しているからなのかもしれません。

 さて、今回は連日、世間をにぎわしている新型コロナウイルス感染症についてお話ししたいと思います。

1月22日には香港のプリンセス・マーガレット病院に感染者が運び込まれた(写真:Anthony Kwan / Getty Images)

感染者報告の理解には注意が必要

 私は、感染管理医師という資格を有し、公衆衛生大学院で国際感染症について学んでいるとはいえ、感染症の専門家ではなく、また全情報をウオッチして分析してもいません。非専門家の医者の雑感という範囲を超えませんので、最初にお断りしておきます。

 中国湖北省武漢市で発生したこの感染症。報道では死亡者数なども少しずつ増えてきて、じわじわと恐怖を増しています。20年1月11日の時点で41人だった中国国内の公表感染者数は、下のグラフのように日に日に増え続け、あっという間に500人を超えましたね。

 ただ、この数字の解釈には注意が必要です。第1に、正確に感染者数を測定することは困難であることです。感染者であっても軽症な人はそもそも病院に行かないでしょうし、行っても検査されない可能性があります。

 第2に、当局の発表に対する信頼性の問題があります。ですので、「どんどん拡大している」のか、「もともと患者は多数いたが情報公開や診療体制の整備により顕在化した」のかを報道から判別することが困難です。