こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。
まずは近況から。私の住む福島県郡山市では、早くも朝晩が冷えるようになってきました。山の方に住む同僚は、朝出勤前に車のフロントガラスが凍っていたなんて話も。福島の冬はおととしぶり、2回目です。雪が降って、道路が凍結して渋滞して、鍋料理なんか食べて。みちのくの冬は結構、いいもんです。
昨年は京都で過ごしていたのですが、あそこはあそこで寒かったですね。なんせ築78年のボロ家に住んでいたので、本当に隙間から冷気が入ってきたのを思い出します。それでも秋にはあちこちお寺に紅葉を見に行けました。大学院生だったので、とっても時間があったのです。また、学生やりたいものです。
さて、本題に入ります。先日、八千草薫さんが88歳でお亡くなりになりました。膵臓(すいぞう)がんにかかっていらしたとのこと。今回は、膵臓がんという、決してまれではない病気について、消化器外科の専門医という立場から解説したいと思います。なお、生存率などのデータもありますので、そういう数字をご覧になりたくない方は本記事を読まないでください。
膵臓がんはそもそもたちが悪い
膵臓がんは、昔からたちの悪いがんであることが知られていますね。どれくらいたちが悪いかというと、国立がん研究センターの調べで、最も早期のステージIの5年相対生存率が胃がんは94.6%、大腸がんは95.4%と高いのに対し、膵臓がんは43.3%と非常に低いという結果が出ています。膵臓がんと同じくたちの悪いがんとして知られている肺がんでも81.2%。ですから、そもそもの性質として、たちが悪いものであるということがまず言えます。
さらにはもう一つ、こんな原因があります。がんはステージがステージ1→2→3→4と進むにつれ、生存率が悪くなります。膵臓がんは、実はステージ4で見つかる人が非常に多く、ステージ1で見つかる人はまれなのです。膵臓がんのステージ4の5年相対生存率はわずか1.7%。つまり、「見つかった時点ですでに進行している」という点でも、たちが悪いと言えます。
なぜ膵臓がんは早期のステージ1で見つかりづらいのでしょうか。それは、膵臓という臓器が関係しています。読者の皆さんは、あまり膵臓のことを考えたことがないでしょうから、絵を描いてみました。

膵臓は、このように十二指腸に抱っこをされるような形で横に長く、お尻の部分に脾臓(ひぞう)という別の臓器がくっついています。大きさは、そうですね……例えるならアイマスクより細く、めんたいこ1本より太いくらいでしょうか。サイズも人それぞれですが、15〜20cmくらいの黄色みがかった臓器です。
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