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高級人間ドックはどうか

 いろいろな病院で、さまざまながん検診が提案され、また人間ドックが提案されています。中には超豪華なものまでありますが、過剰診断・過剰治療のことを考えると今はあまり乗り気になれません。お金ももったいないですし。

 では、お金がジャブジャブあったらどうするだろうか、と私は考えてみます。私の知るお金持ちの多くは、1回10万円以上を支払って人間ドックを毎年受けています。しかし、がんについては、今のところメリットがデメリットを大きく上回るものは対策型の検診以外にないでしょう。ですから、私はお金があったらその分をがん予防のほうで、例えば、運動のためのパーソナルトレーナーでもつけようかなと思います。お金持ちの皆さんには、過剰診断・過剰治療のデメリットについてご存じであることを心より願います。

 そして、それらのデメリット以上に「検診を受け、がんによる死亡を避けたい」という気持ちになっておられるならよいのですが。

 私の意見は以上です。お読みのあなたは、ご自身の価値観でがん検診を受けるかどうかを決めてください。あ、その前にまずたばこを吸っている人は、検診がどうのこうの悩むより、まず禁煙することをおすすめします。そして、私の父の話です。父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています。

 最後に注意点として、「医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある」とお伝えしておきます。重鎮とは、教授や〇〇学会の理事などです。別に重鎮が嫌いなわけではありませんが、彼ら、彼女らは業界の大切なポジションになり、ポジショントークが入ります。ポジショントークとは、例えば「本当は〇〇はあんまり勧められないんだけど、理事をやってるナントカ学会はこれを推進しているしな」というようなもの。偉くなれば、製薬会社や検査会社との関係も濃厚になっていくでしょう。もちろんポジショントークを一切排した、科学者としての誠意のみで動く重鎮もいらっしゃいます。しかし、まったく影響がないかと言われたら、言い切れないことはあるだろうと私は想像します。

 さらに、重鎮になるとどうしても自身の経験が増えるため、自分の経験に引っ張られた発言になってしまうということです。これは、医者としての経験年数が増えれば増えるほど悪化していきます。これからは、この私も悲しいことに逃れることはできません。がん検診についての本稿は、元臨床医で長年、健康情報学の学者をやっている先生に加え、さらに2人の医師にも読んでもらい意見をいただきました。それほど、私は自身の意見が偏っていることを心配したのです。そういう極めてデリケートなテーマであることを、お伝えしたいと思います。